アキラナウェイ

アリー/ スター誕生のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)
3.9
観終わった後もずっと、アリーとジャックの歌声が脳内でリフレインされる。ただただ音楽の力に圧倒されました。

世界的ロックスターのジャクソン・メイン(ブラッドリー・クーパー)は立ち寄ったバーで歌うアリー(レディー・ガガ)と出会い、彼女を自分のライブに招待する。彼女をステージに呼び、即興で歌い上げた「Shallow」。容姿にコンプレックスを抱いていたウェイトレス、アリーがスターになった瞬間。

スターダムを駆け上るアリーと。
酒とドラッグに溺れるジャック。

光と陰が織り成す物語。

演技、音楽で言えば文句無しです。

レディー・ガガの歌唱力、彼女が持ち合わせているカリスマ性が映画の中で凄まじい存在感で鎮座する。普段の奇抜なコスチュームではない、裸のガガ。もう、釘付け!ずっと見ていたいし、ずっと聴いていたい。

そして、監督・主演をこなしたブラッドリー・クーパー。歌も演奏も素人だったのに、努力の甲斐あって彼のステージパフォーマンスは圧巻!そして、かつてアルコール依存症で苦しんだ経験を基にした完璧な依存症の演技に溜息が出る。酒を飲んでいるかいないのかが表情で分かる程、彼の演技はリアル。そしてやっぱりめちゃんこカッコいいな!

ラストシーンの「I'll Never Love Again」が沁みる!!
歌詞がドラマとリンクして、
悲しみを
楽しかった日々を
切々と歌い上げるアリー。
心奪われました。

ただ、諸手を上げて喜べない自分もいて。
それは何処かで「ボヘミアン・ラプソディ」で体感した魂レベルでの感動と比較しているからだろう。

ネタバレ含めて記述しますので、未鑑賞の方はご注意を。















靄(もや)がかかった様で。
どストレートに感動出来なかったのは何故か?

ストーリーはかつてのリメイクなので大筋は変えられないにしても、キャラクター描写が表層的だった印象が残る。

2人が出会ったのは運命だし、魂が呼応する様に惹かれていき、一気に親密になっていくのはわかる。しかし、その魂で結び付いている程の2人の絆の説得力を示す描写に欠ける。もう少し、2人が2人でいないといけない事を示すエピソードが欲しかった。

ジャックの心の弱さを描いていながら、父や兄との確執が伝わり難く、正直に言って、死を選ばざるを得ない程の絶望感はスクリーンから感じ取れなかった。あれだとアリーのマネージャーの心無い一言だけが背中を押した様になる。

アリーとの関係性はそこまで絶望的ではないのに。
また再スタートを切れる筈なのに。

ストーリーテリングの部分で若干淡白さが目立つ。
それがブラッドリー・クーパーの描き方なのかも知れないけど。

特にジャックの死後、個人的にはもっと嘆き悲しみ取り乱し、苦しむアリーの慟哭が必要だと感じる。ただ静かに悲しみに暮れるシーンがほんの少し挿入された程度で追悼コンサートに入ってしまうのが残念。感情を爆発する彼女のキャラクターを終盤に活かしていない。それが本当に勿体ない。

アリーもジャックも、本当はずっと2人でステージに立ちたかった筈。自分のプロデュースをあっさり他人に任せてしまうアリーにも違和感。

この辺りの淡白さが映画の説得力を欠いてしまった。

それでも音楽は一級品!
音楽映画が豊作だった今年を締めくくるには相応しい作品。