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アリー/ スター誕生のmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)
4.2
レディ・ガガもブラッドリー・クーパーもあまり知らないのですが、話題なので見に行ってみたら、主演の2人の魅力と巧さに驚いたし、わたしは「スター誕生」の過去作はどれもいてないけど、これまでに何度もリメイクされてきた作品を、アリーをガガが演じることで、圧倒的な説得力を持たせているし、才能もないし境遇も全く違うわたしも共感できる普遍的なテーマを描いていて、とても良かったです。

ジャックに見出されてから、持ち合わせていた才能を発揮し、瞬く間にスターになっていくアリー。
何者でもなかったアリーに立場を逆転された嫉妬もあるだろうし、これまでアリーが歌ってきたスタイルを変えて売り出されていくことへの反発もあったでしょうけど、そばにいて孤独を癒せる存在をやっと見つけたのに、そのアリーが自分の手の届かない遠くへ離れていくような感覚や、自分だけのアリーではなくなってしまうことへの不安も大きかったんだと思います。

そういう感覚はすごくよくわかるし、愛する人が夢を叶えて成功する事を喜ぶ一方で、すごく複雑な感情もいっぱいあって、焦りや孤独、惨めさ、不安などに苛まれていくジャックの心の内をブラッドリー・クーパーがとても繊細に演じていて、とても感情移入しました。
もしかしたら、ジャックは古いタイプの人なので、女性の方が自分より人気や収入が上回る事への抵抗感もあったかもしれません。

そして、アリーと出会う前から父親との関係における心の傷や、聴力への不安、それに人気稼業なのでそれを維持していくことや、新しい曲を作り続けていくことへのプレッシャーだってあったでしょう。
育ちや体調や仕事柄による情緒の不安定さや、おかしてしまった大失敗が痛々しくて見ていて辛くなりました。
それくらい追い込まれていくジャックの孤独の深さや脆さが丁寧に描かれていたのがとても良かったです。

そして、2人の心に少しずつ距離が開きだしても、どん底のジャックを見捨てることなく支えようとしたアリーの愛の深さも心に刺さるのですが、ジャックのことを思ってしたことが、彼からすると申し訳なさや自分がアリーの足を引っ張ってしまう事への罪悪感をどうしても感じてしまったりして、互いに深く相手を思いやり愛し合ってるのに、そのことが相手を傷つけてしまうことになる哀しさ、やるせなさがとても切なかったです。

わたしはどちらかというとジャックの脆く弱い繊細さが胸に迫ってきて共感したのですが、最後にアリーが真正面を見据え、スターゆえの悲しみや痛みを背負ってでもスターとして生きていく覚悟が伝わってきてとても心に残りました。

主演2人の演技と歌も本当に素晴らしく、この上ないキャスティングだったのではないでしょうか。
とても胸を打つ作品でした。

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