140字プロレス鶴見辰吾ジラ

アリー/ スター誕生の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)
3.8
“フェアプレー大賞”
~鶴見辰吾ジラの年間ベスト10発表~

母からは、「映画ばっかり見てないで、部屋の掃除しなさい!」と怒られている私ですが、母が珍しく私に「あのレディ・ガガの映画見ないの?」と。母からすれば本作は「王道の恋愛映画」と思っているようであります。世間のノリも「ガガ様主演!」「サクセスストーリー!」と言っているようですが、本作はブラッドリー・クーパーの監督・主演作品であります。これは見ねばいけないと映画館に足を運んだ12月30日。最初は「何でこんなパリピが好きそうな恋愛&サクセス映画にロッテントマトが90%フレッシュをつけたのだろう?」と思っていましたが…

なるほど見ると、これは
ブラッドリー・クーパー版の
「LA LA LAND」でした。

元々はクリント・イーストウッド監督作品として構想されていたとのことで、「アメリカンスナイパー」で主演だったブラッドリー・クーパーが監督&主演は燃える要素も浮上してきますし、さらにはクライマックスを見たときに「アメリカンスナイパー」を思わせるような雰囲気を作っていたのも好感度UPです。時折見せる、お洒落なカットの鼻に付くようなキューブリック感も愛おしく思えました。

さて、話をストーリーに戻すと、ブラッドリー・クーパー版「LA LA LAND」として感じた部分として、JAZZ IS DAED精神を感じたからです。これはラジオでの町山さんの補助線効果もあるのですが、男としての象徴としてのロックシンガーであるジャクソンが見出したアリーが、強引にではあれライブステージに立たされ、それがyoutubeという媒体で注目されスターダムに駆け上がる中で、ジャクソンと寄り添いながら歌ったライブステージ、プロデューサーに見いだされショービジネスの世界で成功していく様は、どことなく距離が近いようで遠く、男のロマンは古臭く、女性の羽ばたきという世界の風を感じてしまいました。どことなくニコラス・ウィンディング・レフン監督の「ネオン・デーモン」の中盤を思わせました。町山さんがラジオで「シュガーラッシュ オンライン」と同じ系統の作品として上げていたのも頷けます。男側視点で言えば、本作は中盤での最高到達地点からの本作世界への陰りからだいぶダメージを受ける構成になっています。劇中に出てくる歌の歌詞に「古いモノは終わる時代が来た。」というニュアンスに女性解放運動における男の存在価値はワンダーウーマンに殴り殺されるのか?と思ってたのですが、ブラッドリー・クーパーの監督として本作に救済を与えたのは、ジャクソンの物語に対するケジメの付け方です。互いの夢のために、居場所のために、自由のためにという大義のもとに実行される決別のときなのですが、男として老兵は去るというアーティストとしての芸術熱に支配された精神と葛藤を顔を映さず、作品内の会話的伏線による舗装された終焉の潔い幕引きへの後押しに、本作は女性の夢への道と、男性の欠陥があっても愛して欲しいという鬩ぎ合う立場的葛藤に対してフェアプレー精神を持ち込んでラストへと静かにエモーショナルに導いたこの物語に胸を打たれました。あるクライマックスへのトリガーとあるキャラクターのセリフに嫌悪感を抱きつつも、それによって愛の行方を閉じ込めて「めでたし、めでたし」の後の物語となり、また新たに「めでたし、めでたし」へと解釈させる男気なのか?このご時世のフェアプレーなのか?琴線にはしっかりと触れられた作品でした。


最後に
鶴見辰吾ジラの
2018年年間映画TOP10

1位 「映画HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ」
2位 「ぼくの名前はズッキーニ」
3位 「孤狼の血」
4位 「レディ・バード」
5位 「スリー・ビルボード」
6位 「リズと青い鳥」
7位 「ブリグズビー・ベアー」
8位 「愛しのアイリーン」
9位 「聖なる鹿殺し」
10位 「バトル・オブ・セクシーズ」
次点
「search/サーチ」
「ファントム・スレッド」
「ウィンド・リバー」
「アイ・トーニャ」
「ペンギン・ハイウェイ」
「カメラを止めるな」
「心と体」
「タクシー運転手 約束は海を越えて」

ワースト…今回は該当なし。

今年は「共感と救済」がテーマだったような気がします。100本鑑賞も突破できましたが、どの映画も心の中では魂の大激戦となりました。「スリー・ビルボード」や「レディ・バード」はほぼ欠点が見つかりませんでしたし、「ぼくの名前はズッキーニ」は自分が驚くほど泣いてしまいました。

そして1位はプリキュアです。申し訳ありません!
「STAR WARS」や「ロッキー」や黒澤明作品もフェリーに作品もゴダール作品も語れない、映画ファンとして罪悪感の塊でした。いい大人がスーツで仕事前にプリキュアを見に行くことにも罪悪感がありました。ただ本作は私の映画体験史上最も、あの瞬間に座席にいられたことに意味のある映画でした。

明日はグッドシネマ大賞を発表いたします。