Filmoja

アリー/ スター誕生のFilmojaのレビュー・感想・評価

アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)
3.5
2019年、最初の映画鑑賞は実家に子どもを預け、夫婦で観に行ったこの作品。
予告編のドラマチックで感動的なイメージを期待していたら、意外にもシリアスで重い展開に息が詰まりそうだった。

まず、主演ふたりの熱演は素晴らしい。
そして全編を彩る楽曲もフックがあってキャッチーだし、さすがのクオリティー。
だからこそ、この楽曲群をより際立たせる脚本であってほしかった。
本作は4度目のリメイクだし、おおよその骨格は単純なほど明快だ。夢が叶い、それに伴う確執があって、そして衝撃のラスト…絵に描いたようなシンデレラストーリーと、その顛末。

前半部分の、アリーが成功への道を一気に駆け上がる早いテンポから一転、後半部分では、いかにも90年代ロックスター然としたジャックの転落との対比が、小さなエピソードの積み重ねとして描かれ、やや冗長に感じてしまったし、そのコントラストについていけなかった。

特に、彼の過去のトラウマや精神的な苦悩(聴力障害)といった人間的な絶望感が(長尺な割には)深く掘り下げられることもなく、最後の決断に至るシーンはあまりにも唐突で説得力に欠けるし、それをさらっと受け入れる(ように見えてしまう)アリーのステージにもいささかシラケてしまう自分はなんてもったいないんだろうと思う(もちろん歌唱力は絶大!)。

おかげで今作最大のハイライトが(個人的には)、ドラァグバーでアリーが歌う「ラ・ヴィ・アン・ローズ」と、ライヴステージでデュエットする「Shallow」になってしまったのは皮肉だ。
俳優と楽曲は素晴らしいのに、自分には脚本が「浅く」感じてしまったから。
せめて前半のテイストを維持したまま尺をコンパクトにして、人物描写を丁寧に掘り下げ、いささかわざとらしい“感動”を誘うような演出を抑えてくれていたら…いや、これは単に好みが合わなかっただけかも知れない。妻はそこそこ楽しめたようなので(それでも長いと感じたそう)。

レディー・ガガのプロフェッショナルなパフォーマンスは特筆だし、それだけでも本作を観る価値は十分にあるのだけど、古典的な予定調和の域を出ないという意味では「ラ・ラ・ランド」のような悲恋を劇的に盛り上げるカタルシスも、「はじまりのうた」のような男女の再生をハートウォーミングに描いた爽やかさも本作にはないので、楽曲以上のドラマ性を期待すると肩透かしかも知れない。それだけが心残り。
このモヤモヤを払拭するため、過去のリメイク版も観てみようかと思う。

最後に、ブラッドリー・クーパー。
カート・コバーンをリスペクトし過ぎだぞ!
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