しまうま

DEVILデビル/ラマン・ラーガヴ 2.0 ~神と悪魔~のしまうまのレビュー・感想・評価

2.9
 インド発、サイコパス殺人鬼を題材にしたサスペンス映画。
 インド映画というものを実は今まで見たことがなく、ものすごい偏見でダンスと音楽が陽気なジャンル、という印象しか抱いていなかった自分の浅はかさを嘆きたい程度には面白く、物語にのめり込むことができた。
 
 
 1960年代半ばのインドに実在した連続殺人鬼、ラーマン・ラーガブは41人殺害の罪で死刑を宣告され、1995年に獄中死した。その彼に着想を得たという男が、警察に職務質問を受けた際に「自分は9人殺した」と、何でもないことのように告げる。
 クスリ漬けの毎日を送る巡査長のラーガヴァンは、男が警察をからかっているだけだと思い「法的措置ではない方法」で、男を閉じ込めるのだがーーというのが、大まかなあらすじ。


 基本的には前述のとおり面白かったのだけど、人の名前がそもそも覚えにくいというか、それは観る側が「インド人の名前」に対する知識が浅すぎるせいなのかもしれないけど、そこで話が見えづらくなったりしてしまった。物語そのものは特別に難しいというほどでもないのだけど、つい途中で「あれ、これは誰のことだっけ」となってしまう。

 今作はいくつかのチャプター(6つほど)に分かれていて、そのチャプターごとにタイトルが付けられている。映画的にはなんだか珍しく感じたけど、その点はわかりやすくて良かった。
 ただ、所々アーティスティックな雰囲気を演出しようとしているのか、イメージシーンのような、エレクトロニカを背景に蛍光色を散りばめた演出が混じってくるのにはちょっと辟易した。
 「そんなのはいいから、早く続きを観せてくれよ」と思う自分もいたことは否定できない。僕は別に文学をたしなむために映画を観るタイプの人間ではなくただエンタメを求める気質なので、そういう演出は邪魔だとつい思ってしまう。


 不満はもうひとつ、せっかくサイコパス殺人鬼を題材にした作品なのに、グロ描写がほとんどない。血が少し見えて、あとの凄惨な現場はわざとスクリーンに映らないよう作られている。そもそも全年齢向けの映画ではないし、扱う題材が題材なのだから、そこは思い切った絵を観せてほしかった。
 北野武監督の『アウトレイジ』なんかは、そこらへんはエンタメに振り切ってくれたおかげで楽しめた。今作の程度なら、別に民放ドラマでやればいいだけのことだ。
 映画だからこそできることを、やってほしかった。


 以上の不満な点があるせいで評価スコア自体は低めに設定したけど、何度も書くとおり、全体としては面白かった。サイコパス特有の「常軌を逸した会話」が日常風景の中で流され、それに戸惑う「普通の人々」のギャップは、けっこうスリリングだったし、主人公的ポジションの巡査長ラーガヴァンのクズっぷり、一握りも同情できない暮らしぶりも含め、サスペンスとして満喫できた、とだけは書いておこう。
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