もものけ

21世紀の資本のもものけのネタバレレビュー・内容・結末

21世紀の資本(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

お金って、今やただの数字でしかないのかねぇ〜……。

「21世紀の資本」の著者トマス・ピケティが、5000ページもあり難読書と呼ばれるベストセラー本を解りやすく映像を交えて解説する。


感想。
名前は聞いたことありましたが、著作は未読でした。
難解な経済学のお話を時代考証シーンを映画などのシーンを使って易しく?解説してくれている作品でした。
映画好きな私としては、とても解りやすく解説してくれて、楽しめました。
内容は、全く楽しくはありませんけど(笑)

18世紀から21世紀までの経済の推移を起こった事変などを題材に、富とはなんぞや的な解説を様々な経済学者やエコノミスト、はては心理学者などの持論を紹介してくれています。

面白かったのは、心理学者の心理実験の解説。
ボードゲームで、ハンデを付けて二人に遊ばせた実験での心理的変化でした。
優位な立場になると、それを実力のうちだと思い込み始めて、劣位の相手に対して傲慢になってゆくというお話。
これを、貴族主義の時代から受け継いだ子孫達の立場になぞって解説してました。
最初から持っていて有利なだけなのに、実力で勝ち取ったと思っていると。
膨大な資産を持つ家庭に産まれていれば富がそのまま後からついて来る。
貧困の家庭に産まれてしまうと、いくら努力しても膨大な資産を得ることはありえないと。
それが18世紀からずっと続いているだけとのこと。
これを映画「プライドと偏見」になぞって紹介していたので、解りやすかったです。
なるほど。

経済の話は、たまに陰謀論めいた解釈もあったりするのですが、有名なダイヤモンドを価値にした企業体デビアスが、婚約指輪の発想を考えて普及させて莫大な富を得たと聞いたことがあるのですが、作品の中で似たような話でクリスマスセールが題材になってたのは皮肉でした。
中産階級が富を得始める時期と一緒というのが、降りた富を吸い上げるシステムというのが資本主義なんでしょうかね?

あの無茶苦茶な、ほとんど詐欺とも思えるサブプライムショックで、銀行が更に儲けてしまう話や、タックスヘイブンでの税対策をする大企業の話なんかも、資本を資産増幅に回してループさせてるだけで、実質経済や公共サービスなどに落ちてこなくさせてる挙げ句、人件費をコストと考えて削れるだけ削る体質になってしまって、もはや格差が18世紀に戻ってしまうくらいの脅威だと警告していました。

これにグローバル化経済が拍車をかけているとのことで、確かに自国企業体が所属地を変えて経営する機会を上手く作ってしまっていて、アダム・スミスの提唱する理論では、ここまでの想定を考えてなかったのでは?との疑問を訴えるのは、少し笑ってしまいました、あまりにも皮肉すぎて。
企業体が自由に所属地を選ぶことはできても、ユーザーは移動しませんからね…と言う話には、なるほどな。

そこに、技術革命=次の産業革命ともいえる自動化の技術が追い打ちをかけて、雇用を奪い格差というレベルではない脅威が訪れるだろうと恐怖を訴える話で終わりました。

持論と脅威を訴える内容ばかりの作品で、それをどうするかとの話があまり少なかったのですが、経営の歴史を知るのには、とてもよい作品だったので、5点を付けさせていただきました!!

ラストシーンで語られる、戦後経済の中心で稼ぎまくった世代が交代する時期とのことで、その相続されるであろう資産の膨大な量には、驚きとともにガッカリもした今日このごろでありました。
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