柏エシディシ

21世紀の資本の柏エシディシのレビュー・感想・評価

21世紀の資本(2017年製作の映画)
3.0
経済学者トマス・ピケティの世界的ベストセラーの作者自ら出演監修による映画化ドキュメンタリー。
かなーり、面白い。
そして、とっても暗ーい気持ちになる…
でも、観る価値は確実にある。
出来たら、高校の授業とかで全ての学生たちに観て欲しいくらい。
本作で語られている「真実」は今や、それなりに社会生活を過ごしている人間には既知のものだけれど、ここまで説得力を持って呵責なく突きつけられるとグウの音も出ません……

しかし、その語り口は本当に軽妙で明快。
鈍器にもなりそうなあの大著を、豊富なアーカイブで時にユーモラス、時にシリアスな映像演出で判りやすくガイダンスしてくれる。
映画ファンでもあるというピケティらしく、過去の映画や映像作品からの引用も豊富。映画ファンとしても本当に楽しいし、飲み込みやすい。

資本主義が永続的に抱えている「欠陥」をその誕生から世界の近現代史を通じて、精緻に炙り出していく。
その上で、その悲劇的な末路を避けるための手立てを提示しているし、まさにそれしか手段は無いと思うのだけれど、我々、人類にそんな決断が、舵取りが、果たして可能だろうか……?

「死だけが人を真の意味で平等にする」という言葉が重い。
私たち人類の未来の行き先は、どん詰まりなのか。
全ての崩壊へと突き進むしか道は無いのか。
柏エシディシ

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