きゅうでん

21世紀の資本のきゅうでんのレビュー・感想・評価

21世紀の資本(2017年製作の映画)
-
経済学者ピケティの有名な著書を原作としたドキュメンタリー映画。
原著と違って定量的なデータや統計はほとんど出てこず、経済格差や行き過ぎた資本主義についての定性的な事実や洞察だけが述べられていく。
映画などポップカルチャーの引用や歴史的な記録フィルム、刺激的な音楽をからめることで、あの分厚い書籍の内容が非常に分かりやすく表現されており、ノンフィクション映像として素晴らしい。
その中でも、あえて「映画的」に面白い部分を挙げるとすれば、やはりモノポリーの心理実験だろう。

知らない者同士でモノポリーをプレイする。
ただし、事前にコイントスで「金持ち」と「貧乏人」を決める。
「金持ち」は「貧乏人」の2倍ほどのお金を持った状態でゲームを始める。サイコロは2つ振れるし、スタート地点を通った際にもらえるサラリーも2倍違う。
ここまで露骨な差があれば、モノポリーをプレイしたことのない人でも簡単に想像がつくだろう、当然「金持ち」が最終的に勝利することになる。
ゲームを有利に進める「金持ち」はプレイ中、「貧乏人」と比較して、お菓子はたくさん食べるし、声は大きいし、コマの移動は乱暴だ。言動も、明らかに傲慢かつ無礼になる。
さらには、ゲーム後「金持ち」に”なぜ勝てたのですか”と尋ねても、彼らはコイントスのおかげとは答えない。
勝因を、プレイ中の自己判断、つまり実力に求める。

この結果は、現実世界での貧富とも関係がないらしい。現実の貧困者が「金持ち」でプレイしても、そのような傾向が現れるというのだ。

この実験を見ると、終盤の「資本主義はもはや労働と無関係だから」という言葉がより深く刺さる。
そう、我々の生きる現実世界のルールも、あの実験の露骨な格差モノポリーのルールまっしぐらなのである。
最後はいちおう、ピケティ自身の楽観的かつ希望的なメッセージで終わるが……。
『エリジウム』の世界はもうすぐそこにあるのかもしれない。