なっこ

幼な子われらに生まれのなっこのレビュー・感想・評価

幼な子われらに生まれ(2017年製作の映画)
3.3
男と女は難しい、
親と子はもっと難しい。

重松清さんの作品は、いつも子どもの視点に寄り添っていて、痛いところをついてくるけれど、これが多くの家族の偽らない現実のように思えて、向き合わなきゃいけないと思わせてくれる。映画では、ほとんど自分の気持ちを言わない父親を視点としていても、やはり私は女性の目から見てしまう。どの女性にも少女にも共感できてしまう。だからこそ逆に、女たちよりもずっと男の苦悩が深いことに気がつかされる。家族というこの小舟をどう操縦すべきなのか、いやもう限界だ、こんな舟には乗っていられない、自分だけあの岸まで泳いでいこう、なんて気持ちを。

親になる、ということは、こんなにも難しいものなのか。つぎはぎだらけの家族だからこそ、そう思えてくる。でも、そう苦悩していなくては、離婚という簡単な答えばかりを選んで“家族”を続けることを投げ出してばかりいるだろう。仕事に行って家族のために働いてサラリーを持って帰る。週末は家族サービス。平凡で当たり前とされることをコツコツと続けられる、それが父という存在なんじゃないかな。誰も褒めてくれなくとも。

幼な子われらに生まれ

この“われ”に、自分も含まれるのだ。幼な子よりも先を生きる全ての人が。
ホモ・サピエンスが他のヒト属より種を存続させるのに長けていた点は、妊娠適齢期に毎年のように出産出来ることだった。それは、産んだ子の子育てをまわりの大人に託せていたからだという。群れで子育てをすることが多産を維持できた。

大河の『西郷どん』で繰り返される“子は宝じゃ”という優しい言葉を、これからも聞いていられる世の中であってほしいと思う。
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