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シーモアさんと、大人のための人生入門のmajiziのレビュー・感想・評価

5.0
イーサン・ホークが監督の、ピアノ教師シーモア・バーンスタインのドキュメンタリー。

私も大学までピアノを習っていて、壊滅的に才能無いにもかかわらず、レッスン直前にしか練習しない、なんならレッスン中に課題曲をはじめて弾くとかザラだった阿呆のくせに、ピアノは好きだったんです。それは先生の存在が大きかったのと、音楽に癒されていたんだと思います。下手くそなりに、音楽という力の偉大さは感じておりました。

シーモアさんは美しく柔らかな音を奏でます。しかし喋ると芸術家なんで当然ですが、確固たる自分を持っているわけです。彼の言うことは真理を突いていて心に響きます。暖かで情熱的、かつユーモアのある教え方も、見ていてとても楽しいです。

イーサン・ホークもチラッと出てくるのですが、結構切実な相談で(所謂、中年の危機というものですかね?)どれだけ周りから見て順風満帆な人生でも、みんな悩みや迷いはあるんだな、と感じさせられます。

シーモアさんの朝鮮戦争のエピソードや、元教え子との禅問答のような会話、そして独自の芸術への敬愛と考察は、ピアノに興味が無い人でも、考えさせられる内容だと思います。

私は人間は誰しもが創造する生き物で、生きることは創作の繰り返しでもあると思います。大衆に消費され迎合することを拒否し、自分と向き合う道を選んだシーモアさん。最後に出てくる言葉は、その道を極めた人だけが見える風景なんでしょう。

素晴らしい作品でした。イーサン・ホークありがとう〜!
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