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ワンダー 君は太陽のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

ワンダー 君は太陽(2017年製作の映画)
3.7
遺伝的原因で顔の骨格が異なったりする症状をもった男の子オギーは何回も整形手術を受け、宇宙帽を被らなければ外出できなかった。自宅学習の後に初めて学校(小5)に入学し、いじめに遭いながらも、友人を得て、素顔のままで自信を持つまでのハートウォーミングな話。

皆優しい。皆誰かの太陽になっている。

でも原題『ワンダー』(奇跡、驚異)のままの方がよいと思った。

というのは、邦題の副題「きみは太陽」は太陽(sun)と息子(son)を掛けているのだけど、オギーを家族の中心に置くことで、言葉にできない犠牲を家族が払っており、まるで息子の周りを皆が回っていて太陽系の惑星のようである、という意味も含んでいる。自分が主人公の人生を歩んでいない。

その一人一人がオギーとの関わりの中で自分の人生の主人公になっていく話が平行して描かれているが、邦題のままでは、奇跡は起きないままである。

もう一つ、スコアをfilmarksの高い評価まで上げられなかった理由は、作り込まれ過ぎ感があるからで、いい話だし、構成はうまいし、魅力的なキャラクターばかりで、実に「アメリカン」な「ディズニー的」(ディズニーではないが)人工善である。観ている時は面白かったが余韻が薄く、一つ一つのエピソードの掘り下げ方が浅いと思った。

とくにもっと掘り下げてあげてほしかったのは姉のヴィアの心情である。きょうだいに病人がいるとそのきょうだいはまさに病人を中心とする惑星であり、自分を抑え優等生的生き方を強いられる。その苦悩は描かれたが、優等生的方法で解決されていく。私もきょうだいに病人がいたので、この感覚は非常にわかるのだが、ヴィアは実に最後まで優等生である。

なぜここまで全体に優等生的な道徳教育作品に仕上がっているのかを考えてみた。これは子供たちに見せるために作られたのではないか。

私は知らなかったので観賞後に調べたのだが、この症候を持っている新生児は、実はかなり高い割合(1万人に1人)である(日本に1万人以上、東京に1000人以上)。その内どれだけの割合の子供がオギーのように家族に愛され家の外に出られて、普通学級で学ぶことができているのだろうか。私自身が全く知らなかったということは勇気を持って外に出られる人が少ないということで、それは症候のことを知らない人から好奇と偏見の目に晒されるからだろう。

そういう意味では制作されたことは意義深いし、痛ましい出来事を減らして表現した理由もわかる。

ただ、こういう症候の人がいますよ、好奇の目で見たり偏見を持ってはいけませんよ、ましてや差別的な行為、いじめはだめですよ、家族や周りの人たちはこんな思いをしていますが皆優しいですよ、と触りだけを総花的で紹介して終わっていて、訴えかけてくるものが少なかったのが残念だった。
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