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ワンダー 君は太陽のnetfilmsのレビュー・感想・評価

ワンダー 君は太陽(2017年製作の映画)
3.8
 子供には広いベッドの上、ジャンプする少年は頭に宇宙飛行士の帽子を被りながら、宇宙への憧れを夢想する。広大な宇宙を模した壁紙。青い『スター・ウォーズ』のTシャツ、傍のテーブルに置かれたテディベアのぬいぐるみ。映画はオーガスト・プルマン(ジェイコブ・トレンブレイ)の独白で始まる。ネート・プルマン(オーウェン・ウィルソン)と妻のイザベル(ジュリア・ロバーツ)の間に第二子として生まれたオーガスト通称オギーは夫婦に待ち望まれた男の子だったが、生まれながらに「トリーチャー・コリンズ症候群」という疾患が見つかる。頬骨の欠如等の顎顔面形態の不調和が特徴的な症状として見られる疾患で、常染色体優性先天性疾患の中でも稀有な例の一つでもあるこの病気はブルマン家を苦しめる。遺伝的な疾患で27回も手術を繰り返した彼はそのせいで、一度も学校に通わずに、母イザベルの自宅学習で勉学を学んで来た。そんな彼に社会と触れ合う時が唐突に訪れる。父ネートはまだ早いと慎重になる中、母イザベルは彼が5年生になるタイミングで、学校への編入を決める。トゥシュマン校長(マンディ・パティンキン)の紹介の後、学校を案内すると言われた彼は、そこで初めて3人の生徒と対面する。ジャック・ウィル(ノア・ジュプ)、ジャスティン(ナジ・ジーター)、ジュリアン(ブライス・ガイザー)の3人は彼の顔に驚きながら、学内を案内する。

 グラフィック・デザイナーとして活躍していたR・J・パラシオによるベストセラー小説を元にした物語は、母親の子宮の中のような無菌状態に守られていた「トリーチャー・コリンズ症候群」の息子の成長譚を綴る。ジェイコブ・トレンブレイの姿は、母親のジョイ・ニューサム(ブリー・ラーソン)により、無菌状態の部屋から突然外に放り出された『ルーム』を真っ先に想起させる。両親と実姉オリヴィア(イザベラ・ヴィドヴィッチ)、愛犬デイジーと半径50cmの世界にいたオギーが突如、雑菌だらけの下界に放り出される。それだけでも年端の行かない子供には過酷だが、両親の心配をよそにオギーの学びたい欲求は葛藤を繰り返しながら、一歩ずつ進んで行く。開巻からオギーの一人称目線で据えられた物語は、やがて彼の姉のヴィアや、ジャック・ウィル、、ヴィアの親友だったミランダ(ダニエル・ローズ・ラッセル)ら子供たちそれぞれの葛藤へと向かう。両親の愛情を受けようとするも、難病の弟のために自らを犠牲にした姉の葛藤、最高の親友だと思っていた同性からの裏切り、映画は子供目線で綴られた市井の人々の些細な日常を丁寧で穏やかな目線で綴っている。

 図らずも人生のスポットライトを浴びる市井の人々の生き様、一瞬の登場となったソニア・ブラガの心地良いインパクト。それと共に、お腹を痛めて産んだ我が子を見つめるジュリア・ロバーツの眼差しと、そこから一歩引いたところで戦況を見つめる現代的な父親オーウェン・ウィルソンがすこぶる心地良い。オギーに対する眼差しの温かさとは対照的に、ややいじめっ子の扱いには疑問の余地もあるが、「自分たちの外見は変えることが出来なくても、見る目を変えることは出来る」という校長の言葉は、自国第一主義を掲げ、排他的な行動を続ける現代のアメリカ社会にも警鐘を鳴らす。
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