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ワンダー 君は太陽のねーねのレビュー・感想・評価

ワンダー 君は太陽(2017年製作の映画)
4.8
きっと誰もが自分に自信がもてなくて、
誰かに嫌われることを恐れていて、
誰かに愛されたいと思っている。

「偏見」を世界から消し去ることは難しい。
でも、お互いの心をしっかりと見つめ合うことはできる。
どんなに時間がかかっても。
けなされても、喧嘩しても、
すれ違っても、わかりあえなくても、
孤独に打ちひしがれて、泣きわめいても。
勇気をだすことはできる。
一歩踏み出して、理解することはできる。
私たちは支え合い、思いやりながら生きているのだから。

この作品は、少しだけ人と見た目が違う少年オギーを中心に描かれているようにみえるけれど、本当は、彼を取り囲むすべての人たちの物語。
オギーは太陽。
そして、ジャック、ジュリアン、サマー、姉のヴィア、ミランダ、母親、父親、多くの惑星たち。
本作が「ただのお涙頂戴映画」に成り下がらなかったのは、彼らの視点からも物語をきちんと掘り下げていたから。

この物語における太陽=主役がオギーであることは間違いない。
けれど、周りの彼らは決してただの惑星系の一部にすぎないわけではなくて、ちゃんと一人ひとりが主人公なのだ。
思春期にありがちな反抗心や、葛藤、親だからこそ感じる悩み、不安…
そうしたたくさんの感情をひとつひとつ丁寧に描き、見事にラストへ終結していく脚本美に自然と涙を誘われる。
正直泣ける予想はしていたけれど、開始10分から最後まで、ずっと泣きっぱなしで、ハンカチが足りないくらいだった。
劇場中が涙であふれていたけれど、きっと「悲しみ」ではなくて「優しさ」の涙ばかりだったはず。
誰もに勇気と優しさを与えてくれる、あたたかさに満ちた傑作だった。

オギー役のジェイコブくんは、『ルーム』でもすばらしい演技を見せていたけれど、今作でその実力は確かなものになったと思う。
声を震わせ、涙を流しながら心の叫びを訴えかけ、ときには子供らしい冗談を言って屈託のない笑顔を見せる姿は、まぎれもなくオギーそのものだった。
ヴィア役のイザベラちゃんや、ジュリア・ロバーツとオーウェン・ウィルソンの演技もよかったのだが、ジャック役のノア・ジュブくんは大人顔負けの繊細な表情を見せてくれて、将来性を感じさせられた。
最近は良い演技をする子役が多くて、今後が楽しみになりますね。
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