うめまつ

ワンダー 君は太陽のうめまつのレビュー・感想・評価

ワンダー 君は太陽(2017年製作の映画)
3.6
構成がとても良く出来ていて、限られた中にもあらゆる視点の物語が丹念に詰められた、愛情と栄養たっぷりなお弁当みたいな作品だった。勿論泣いた。この作品の素晴らしさはもう語り尽くされているので、どうしても涙と一緒に飲み込めなかった事だけを書きます。

この映画は《人は見た目じゃないから中身を見てね》と伝えてくる。それは確かに大切なことだと思うけど、誰かジュリアンの中身はちゃんと見てあげたのか?彼こそが人は中身が大事だってことを一番深くで理解していたと思う。きっとこれまでも金持ち自慢をしながら、取り巻き達を豪華な家に呼んであげたり、美味しいご馳走を振舞ったり、高価な玩具を貸してあげたりしていたと思う。空っぽな自分が人気を繋ぎ止める方法はそれしかないから。

この映画は《人は生い立ちで決まる》と伝えているように見える。あれほど愛情もお金も理解も忍耐も知性もサポートもユーモアさえある完璧な家族の元に生まれたオギーは間違いなく幸せだ。それに引き換えジュリアンの両親の描かれ方は、この親にしてこの子ありとでも言いたげで悲しい。勧善懲悪を専売特許にしてるディズニーですら、ヴィランズの子供達は良い子なんだよ。血筋や家庭環境だけで人格が決まるなんてことはあってはならない。良心が芽生えるごとに親に摘まれてきたであろうジュリアンの将来が心配だ。早めに自立してくれることを願う。

ラストも《オギーはみんなと同じ普通の男の子だよ》という落とし所を見つけて欲しかった。あれではよくも悪くも特別なままだ。結局オギーは自分の運命を呪うことも誰かを憎んだりすることもなく、どんな困難や逆境をも跳ね除けて、みんなに愛され尊敬される完全超人になってしまった。遥か手の届かない遠い存在になってしまったようで寂しかった。冒頭の臆病で泣き虫なオギーに会いたくなった。
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