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ワンダー 君は太陽のJUNのレビュー・感想・評価

ワンダー 君は太陽(2017年製作の映画)
4.5
心の中を覗けたら、みんな普通じゃないと思う。

人を労われ。
みんなも闘っている。
相手を知りたかったら、やることは1つ。

よく見ること。


この映画には、あまりに大切なことがたくさんつまりすぎている。見た目にハンディキャップを負った主人公・オギーの物語は「いじめはいけない」とか「差別はいけない」とか「人に優しく」とか、そういう分かりすぎた事ではなくて、もっと根本的に私たちが忘れてしまったような"純粋さ"を気づかせてくれるものでした。
最初、遺伝子異常で顔が変形して生まれてきてしまった一人の少年が、強さと優しさを学ぶ、みたいなお話だと思っていました。しかし、この映画は、オギーだけじゃない、姉のヴィアやその親友のミランダ、オギーの初めての友達・ジャック…様々な人の物語が一つになってできたもので、まさに先述の格言通りの「みんなも闘っている」という事を教えてくれるもの。

キャラクター達がとにかくいいですね!
オギーもそうだし、悩みを抱えながらも弟を愛することができる姉や、子供を第一に考えながらも自分とお互いを忘れない母や父、スクールカーストに脅かされながらも強さと勇気を持った友人達や、全てを寛容に受け入れることが出来る校長先生や担任の先生。みんな、これでもかというほど素敵でした。
正直現実がこんなにいい人たちの集まりだったら、誰だってこれくらい幸せな日々を送れるだろうな…とは思うのですが笑、きっと彼らが素晴らしい人々で居られるのは、オギーという"太陽"があるからなのでしょうね。
それにしても、この校長先生は本当に素晴らしい人間です。

"オギーは見た目を変える事はできない。
私たちが見る目を変えなくては。"

と言える人間が一体世界には何人いるでしょう。みんながそう思えるようになれば、差別なんてものはなくなるのに。

皆は、皆の物語の主人公だ。自分中心に世界が回っていて、それぞれの宇宙がある。この映画の家族はオギーという太陽がいて、その周りを回る太陽系の惑星や衛星達がいるけど、地球に住む私たちが、例え太陽の周りを回っていると知っていても地球を中心に宇宙を考えるのと同じように、太陽だけが全ての中心な訳ではなくて、一人一人の惑星に、それぞれの宇宙がある。
オギーは、周りを照らしてくれる暖かくて大きな存在かもしれないけど、照らされた星達もまた一つの存在なのです。

この作品はわかりやすいオギーという存在がいるので単純に物事が進むのですが、現実はもっと複雑でしょう。
きっと、皆思う事は違う。「自分は恒星だ」と言い切れる人もいるだろうし、「自分は月のような衛星かも」と控えめな人もきっといる。でも、恒星の方が強いとか衛星の方が惑星より弱いとか、そういう事は絶対になくて、例え周りが大きく見えたとしても、自分が惨めに見えたとしても、逆に自分が偉大に見えたとしても、きっと違う宇宙では自分は違う星。輝いて見えるあの人も、実はその人の中では海王星かもしれない。可哀想だと決め付けているあの人は、もしかしたら自分からしたら自分は太陽のようだと思っているのかも。
だから「人を労わる」という気持ちは呼吸をするのと同じくらい大切なんだと思います。自分の宇宙が絶対じゃない、みんなもそれぞれの宇宙で闘っているのだと。

一見できているようで、過ごしているうちに忘れてしまっているそんなことを、思い出させてくれる作品でした。

素晴らしい役者さんたちと、美しすぎるストーリーで、そんな事を気付かせてくれたこの映画は、まさしく名作と言えるでしょう。
『ウォール・フラワー』の監督が作ったというのも納得の、良質すぎるストーリー。劇場で観られなかったことが本当に悔やまれます。

全ての人におすすめしたいです。
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