ノラネコの呑んで観るシネマ

ザ・ブック・オブ・ヘンリーのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

2.9
Netflix。
コリン・トレヴォロウの2017年の未公開作だが、評価に困る大珍品。
天才的な頭脳を持つヘンリーは、隣家の美少女クリスティーナが、警察関係者の継父から性的虐待を受けていることを知る。
通報が握り潰されると、ヘンリーは彼女を救うためにある作戦を練りはじめる。
この映画、まず前半と後半で主人公が入れ替わってしまう。
前半を主導するヘンリーは途中で退場し、後半作戦を決行するのは天才ヘンリーに頼り切りだった頼り無いママ。
ナオミ・ワッツのダメママっぷりは良いのだけど、あまりに主体性が無いキャラクター。
そして紆余曲折の末に、ヘンリーもママも作戦も関係ないところから、唐突に物語の結論が導き出される。
1時間40分かけて語られた物語は、実は無意味であったという驚くべき展開。
厳密な意味では、これが物語映画と言えるのかすら疑問がわく。
だからと言って、全然つまらないという訳でもないのが困る。
結論が出るまでは、よもやそんな話だと思ってないから、力のある俳優たちのメロドラマでそれなりに引っ張る。
しかし物語の帰結点が全く筋立てと乖離しているので、結局自分が何を観たのがよく分からない。
観終わって浮かんだのは「トレヴォロウはこの話の何に惹かれたんだろう?」ということ。
無意味となった作戦の記録、即ちヘンリーの生きた証を焼却するママの、虚無の表情だけが残った。