カナッパユイッパ

潜水艦クルスクの生存者たちのカナッパユイッパのレビュー・感想・評価

4.2
全体主義国家の狂気が描かれた映画は多数あり、またロシア(ソビエト)では、伝統的に戦争で奪い取った物は、好き勝手してよいという考えが根強くあり(勿論、国際法違反)、加えて末端の兵士に十分な教育、訓練、待遇が与えられていない(予算は潤沢にあるが横領などで、末端には行き届かない)ので、彼らが行う残虐は凄惨であることも一部の書籍で扱われています。

この映画では、そのような国家であっても国に忠誠を誓い友情で団結した優秀な兵士が現場を支えています。
その優秀な兵士を潜水艦の事故が襲います。
想像を絶する過酷な状況において、互いに励ましあい、国家に忠誠を誓い、懸命に最後まで希望を捨てない兵士を、国は簡単に裏切ります。
兵士の生還を祈る家族の想いを、国は易々と踏みにじります。

20年前に起こった事故を描いた映画ですが、その国の状況は変わっていないか更に悪化して、ウクライナで今も残虐な行為を行っているのです。
我々は、狂気が支配する国家と国境を接しているのです。
ここまで書くと、自分も逆のプロパガンダに乗せられていますが、この映画では国に抵抗する家族が描かれ、理性を保つ高官の気概が示され、父への誇りを守り通した息子への勇気が称えられています。ほんの少しですが、私たちはそこに希望を見出すべきでしょう。