たま

潜水艦クルスクの生存者たちのたまのレビュー・感想・評価

4.0
アクションにカテゴライズされているこの映画、本来なら見ないタイプの映画だ
けど、マティアス目当てで予備知識ゼロでの鑑賞。

これは2000年に実際に起きたロシアの原子力潜水艦事故の話だったのですね。

ロシアの話を英語でと言うのに違和感を感じるのは仕方がないけど、この話はロシアで作られることは、現状のロシアを思えば皆無だし、そこは目をつぶるしかない。

これはアクション映画と呼んでしまうのは、とんでもない間違いだった。
潜水艦という閉鎖的な場所で起きた惨事に直面した、男たちの葛藤と勇気と生への渇望が迫力と共に描かれている。

そして、帰りを待ち望む家族の苦悩。
見ていてかなり、心が囚われてしまった。

国を背負う軍人たちの筈なのに、給料も届かないとはどういうことだろうか。
この事故も潜水艦の老朽化による事故だろう。

乗組員の生命よりも、国家の威信を優先するロシア政府の態度に、現在のロシアの仕掛けた戦争と繋がる。
前線で戦う兵士たちは、きっと誰もが戦争なんて望んでいない、家族を愛する人達なんだろう。

沈没した潜水艦を救出しようにも、装備の老朽化と整備不良で全く役に立たない。
軍事機密と国家の威信によって、外国の支援も受け付けず、無駄な時間を費やす。
上層部の見栄やプライドの犠牲になる人々。

そして一刻も早い救援が必要で、人命を救うのに1秒を争うのは、トルコシリアで起きた地震とも重なり、内戦下のシリアを憂う。
政治や対立よりも何よりも人命尊重を優先にすべきことなのに。

ミハイルが残した手紙が切ない。
ミハイルのみならず、皆同じ気持ちだったに違いない。
レア・セドゥ演じる妻の、憤りと悲しみの中にある強さも感じられた。
生きていくしか無いのだから…

海の男たちの、家族と仲間を思う気持ちが、ズシンと心に響いた映画だった。
たま

たま