えんさん

ブラック・ファイル 野心の代償のえんさんのレビュー・感想・評価

1.0
巨大製薬会社による薬害問題の証拠を探る野心家の若手弁護士ケイヒルは、チャールズが経営している弁護士事務所に所属し、彼が率いる弁護団で活動をしていた。世間的にはアーサー・デニングの経営する製薬会社の被害にあった薬害患者は多くいたが、臨床データを巧みにあやつり、決定的な証拠を残さずにいた。そんなあるとき、ケイヒルは金髪の美女から機密の臨床ファイルを受け取る。その証拠を使って、裁判を有利に進めようとするケイヒルだが、美女との出会いをきっかけに、予想もつかない展開に巻き込まれていく。出演は、「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」のアル・パチーノ、「羊たちの沈黙」のアンソニー・ホプキンス、「ターミネーター 新起動/ジェニシス」のイ・ビョンホンら、有名スターが共演している作品。監督は、本作が監督デビューとなるシモサワ・シンタロウ。

いくら高級食材を集めようが、料理人が下手な料理をしてしまうと、途端に食えないものになってしまうことは往々にありますが、この作品はまさにそれを典型にしてしまったような形になっています。アンソニー・ホプキンス、アル・パチーノという二大巨塔を使いながら、彼らを全く活かすことなく、なぜ、こんなにつまらない作品になっているのかが不思議なのです。このつまらなさを分解していくのも大変。それ以上に、なぜこの作品に、(イ・ビョンホンを含め)これほどの名優が、出演がかなったのか、その理由を知りたいくらいです(笑)。

と、文句ばかりいっても仕方がないので、詳しく分析していくと、出だしはいいと思うのです。薬害の裁判の匂いを漂わせながら、ホプキンス演じるアーサー・デニングと謎の美女の謎めいたやり取りから、この美女がファム・ファタール(”運命の女”)的に動いていくのかと思ったのですが、謎の美女がいきなり謎の死を遂げてしまう。いやいや、この死をきっかけに回想シーンを使いながら、結局は彼女を中心に物語を回していくのか、、と思ったら、やはり彼女が死んだら、そのまま物語上もフレームアウトしてしまうような薄い存在に、、、それとともに、デニングも序盤で消え、終盤くらいまで登場してこないなど、存在感が薄い存在になってしまう。結局、ケイヒルが嘘くさい証拠を元に、事件の全容を解明していこうとするのですが、謎めくはずの美女が早々にいなくなっているので、彼女に振り回される描写は使えず、ただただ証拠に振り回されるアホな人間にしか思えなくなるのです。。

それに決定的におかしいのが、イ・ビョンホン演じる殺し屋(フィクサー?)の存在。彼は何に取り憑かれながら、自分の手を汚していくのかが作品を終わっても分からない。。薬害に関連してそうなような気はするのですが、関係のなさそうな人まで手を付けていくのも意味がわからない。そもそも薬害の何が問題だったのかというのもクリアじゃないので、デニングがどれだけ非道だったのか、チャールズが如何に暗躍していたのかの関係もよく分からない。もう分からない話の中で、デニング演じるホプキンスは印象の残らないキャラクターを演じさせられ、アル・パチーノは彼の大袈裟な演技が悪い方向へ出てしまっているように思います。本当に、出ている役者のいいところが一ミリも出ていないのです。

んー、久しぶりに入場料を返して欲しい作品でした。大物役者が出ている雰囲気だけは出ているので、それだけは楽しめるかもしれません。