えんさん

古都のえんさんのレビュー・感想・評価

古都(2016年製作の映画)
2.0
京都で代々続く呉服店を営む千重子と、北山杉の里で働く苗子。生き別れた双子の姉妹とその娘たちは、時代が大きく移ろう中、受け継いできた伝統の継承に葛藤する。。川端康成の同名長編小説を、舞台を現代に置き換え映画化。松雪泰子が双子の二役を演じている。監督はハリウッドで映画を学び「Re:Play-Girls」などを手がけたYuki Saito。

京都に住む人間としては、京都が舞台になっている作品は見逃せないと思って観た作品ですが、、うーん、評価が難しい作品です(笑)。京都といえば、日本の中でも、最近は海外でも日本の伝統美を残す都市として人気を博していますが、伝統を残していくということはどういうことなのかを、この作品では問うているように思います。やはり、京都人ではないものの、京都に少し長く住んでいて分かるのは、京都でも本当に京都らしいのが残っているエリアは四条界隈の一部の地域だけ。あとは観光地として有名な寺社周りがあるに過ぎない。そうした点としてしか人が凝縮しない地域は、それこそ一昔前のシャッター通りと同じことで、土産物屋などの観光に特化したところは成長するものの、本作で取り上げられるような呉服であるとか、あるいは昔ながらの野菜、漬物、生活周りの製品を売ったり、作ったりしているところは廃れていく。無論、ネットなどを使って、京都ブランドを前面に出すところは頑張っているのですが、京都だから、、という伝統に縛られていると、たとえ京都という街であっても成長できない。その伝統をどう未来につなげるかを母娘の物語として描いているのです。

ただ、本作はそうはいっても、やはり京都というブランドにあぐらをかいているなという部分が何か感じられるのです。「京都のもんは京都の中の世界に満足してしまって、外に出ん」という台詞があるのですが、それだけ京都人は崇高な京都ブランドを愛してしまっているのです。確かに日本の伝統美は美しく、映像としても見事に捉えられているのですが、例えば、千重子の家の夕飯が京都のおばんざい揃いで、食材は錦市場で買い入れて、仕込みも一流の料亭のような下ごしらえの繊細さ、、京都界隈の伝統ある家ではそういう夕飯なのかもしれないですが、一般人はイオンやフレスコで普通に食材買うよ、、とツッコミを入れたくなるのも事実です。親戚の息子もレクサスで街を駆け抜け、夕食も一流のフレンチなど、、やはり庶民感覚からは一歩かけ離れている。。これって、現在を生きる貴族のお話なんですかね? 文豪の小説を下敷きにしているので、お話も異様に抽象的過ぎる。京都や日本の美しいところは存分に堪能できるのですが、それ以外の要素は全てフワフワと浮いてしまっている作品です。