なっこ

古都のなっこのレビュー・感想・評価

古都(2016年製作の映画)
3.2
とても優しく美しい物語だと思う。
京都もパリも“優美”だという形容詞が似合う街だ。どちらの街並みもとても美しく切り取られていて旅行気分でうっとり眺めてしまう。

そして見終えた後、なぜか優しい気持ちになって、ああこうやって私も生きていくのだと、嬉しい気持ちにもなった。それは描かれていた女性たちが誰もとても美しく芯が強い印象だったからだろう。

親娘はへその緒で繋がり、双子の姉妹は胎水の中で一緒だったという強い絆がある。
女性性は自然との強い絆があるものだと思う。月のものがあり、産む性であることが、太陽や月、そして大地と地続きで繋がっている感覚を育むのだと思う。それはとても感覚的なもので、言葉でも表現するのは難しい。持って生まれた感覚のようでもあるし、太古の昔からヒトとしての遺伝子に組み込まれているような不思議な感覚だ。そういう淡くつかみどころのない感覚を、とても美しく文学的に伝えてくれたように感じられた。

自分を表現したいという欲求は誰にでもあるものだと思う。できることなら、芸術的な手段で。絵が描けたなら、ピアノが弾けたなら、ヒップホップが踊れたら……誰だってそれくらい思う。キラリと光るものがあるかどうかは別にして。何かを始めた時は、純粋にその欲求に従っていたはずなのに、、、ある時迷い始める。このままで良いのだろうか。こんなことで良いのだろうか。続けることが苦しくなる。己の限界を知って身の程をわきまえるようになるのか、その欲求の源泉を失って、モチベーションが枯渇してしまうのか、それは分からない。ある時立ち止まらざるを得なくなる。私は一体何のため、誰のためにこれを続けているのだろう、と。
親の望む就職先に進むか迷う舞も、絵の勉強のためにパリに来たけれど、思うように絵が描けなくなってしまった結衣も、そういう葛藤を抱えている。

「私は“それでも続ける”ということができなかった」と、私の職場の先輩は絵で挫折した経験をそう言葉にした。
「誰が自分より上手いとか下手とか、そういうことを気にせずに自分を表現し続けていける人がプロになるんだよ。それで食べていくんだよ」と。

ああ、そうか。

心から思った。そして、そんな大事なことまで話してくれるその人を私は心底尊敬した。

自分の心の奥にけして消えない情熱を探し当てた人は幸運だ。
そういう大事なことは、簡単には分からないものだ。

目の前のことであくせくしていると、つい早急に結果を求めようとする。簡単に答えが欲しくなる。10年20年というもっと長い時間軸の中で自分は何を求めて、これからを生きて生きたいのか、なんて考えている余裕がない。
でも、必要なのは立ち止まって振り返って自分の源(みなもと)にちゃんと立ち返ること。
何十年という時間をかけて自分をここまで連れてきてくれた、思考や原動力は一体何だったのか、何によって育まれてきたのかを。

もしも、“運命の出会い”があるのならば、その名の通り、その場まで私を運んでくれるはずの私の命を輝かせる源を、いま私はつかんで離さないようにしたい。
なっこ

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