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ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期のchiakihayashiのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

ドイツ映画祭とTIFFでは女性監督の鋭い社会意識による作品を続けて見たので、気分転換に近所のシネコンで鑑賞。期待に違わず、愉しく笑いました! いやぁ、3作目にして最高傑作だと思う。
ドジだけどポジティブな天然キャラのブリジット・ジョーンズ(レニー・ゼルウィガー)がキワドイところで微妙に発揮する賢さに、3作目にして素直に脱帽。白髪がチラホラするコリン・ファースのマーク・ダーシーは若かりし頃よりもホレボレする男振りだし、新しく登場したアメリカ人のIT長者のジャックに扮するパトリック・デンプシーは、『魔法にかけられて』(これも傑作のラブコメ)のヒロインの相手役からTVシリーズの『グレイズアナトミー』を経て、笑顔がとろけるほどチャーミングなナイスガイ振り。
しかし、なんといってもプロットにびっくり! Brigitte Jones's Babyという原題が示す通り、ブリジットは43歳にしてなんとオメデタ。でもベイビーの父親は、野外音楽フェスの豪華テントに迷い込んで一夜限りのセックスを楽しんだジャックなのか、5年前に破局を迎えた後に再会し、他の女性と結婚したはずが実は離婚協議中だというので思わずベッドインしたマークなのか、がわからないという設定。
2人の男に愛された女は死ななければならないというのは、日本だと万葉集に歌われた真間の手児奈、映画ならフランソワ・トリュフォー監督『突然炎のごとく』に典型的に見られるように、秘められたルールだと、指摘したのは田嶋陽子さん。そりゃそうだよね、父親がわからない子どもを産まれては家父長制は成り立たないもの。
ところが、ブリジットの場合は・・・・・・。
ブリジットは反射的に羊水穿刺を拒否したのでベイビーのDNA鑑定は誕生後。結果は観客には知らされないのだけれど、その1年後のブリジットの結婚式では、ジャックが赤ちゃんを抱いていて、マークがその赤ちゃんを「我が息子」と呼んで受け取る。ってことは、ひょっとして遺伝的父親はジャックで、ジャックは離婚したカップルのように、子どもにとっては〝もうひとりの父親〟ともいうべき存在ってこと???(いいよね、子どもには、父親は複数いたって)。
結婚式がハッピーエンディングで、モノガミーはしっかり維持されつつも、これってスゴくない!?
いえ、もちろん、赤ちゃんの遺伝的父親はマークと判明してめでたしめでたし、ジャックはゴッドファーザーになって、ブリジットとマークのカップルとの友情は続き、結婚式に参列する−−−−という筋書きだったとしても、なかなかスゴイけどね。
脚本に名を連ねるエマ・トンプソンがさばけた女医さん役で、ピリッとしたユーモアがイギリス風。
監督は第1作を撮ったシャロン・マグワイア。前作の『ブローン・アパート』(2008)は、ごく普通の女性が秘める奥深さを演じさせたらピカイチのミシェル・ウィリアムズの実力と魅力を遺憾なく引き出したサスペンスだった。
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