るる

ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期のるるのネタバレレビュー・内容・結末

2.8

このレビューはネタバレを含みます

こういうダメ女の結婚できない自虐系ラブコメ大作って今後しばらく作られないんじゃなかろうか、まず自虐が流行らなくなってきてるし、自己分析系はシビアな方向に先鋭化していってるし、トレンドは人種的に多様でスマートでパワフルなエンパワメントだし、そうこうするうちに無理して結婚しなくてもいいんじゃない?って時代だし、
さておき『エイミー、エイミー、エイミー』は見ておきたいんだよな、さておき『クレイジーリッチ』も見なくちゃな…とかなんとか思いつつ。三部作の終わりを恐る恐る。

一作目に比べて各トピックへの言及や分析が足りないというか、ちょっと焦点がボけてた印象かな? 恋愛仕事実家時事ネタに加えて妊娠出産子育て母親になること、広く浅く…かといってブリジットの人生について、という感じも薄かったような、マークとジャックに事情がバレてから更なる一波乱を期待してたので、ちょっと物足りず。フィナーレ感はあったけど。ブリジットもマークも年取って良くも悪くも落ち着いたね、って感じ…かな。

とはいえ、この年代向けのラブコメ、アラフォー等身大主人公のラブコメ、圧倒的に足りてないから必要だよね…恋愛したい人達が恋愛を楽しめる時代であってほしいので、はばかることなく増えてほしい…

ダニエルの死、なんだかな…ラブコメの帝王ヒュー・グラントの引退式のようで、遺影だけの出演が、なんともはや、と思ってたら最後に写真だけの再登場、うーん、夢があっていいのかな。
『パディントン2』のヒュー・グラントが良かったので新たなキャリアに期待してるんだけど、老いたプレイボーイがどのように幕を引くべきか、については、いつかきちんと演じてほしい気持ち。いつまでもプレイボーイでいなくちゃいけないなんてことない、落ち着いたってカッコ悪くたっていいじゃん、という男の道を作品で示してほしい気持ち…

パトリック・デンプシー、よくこんな役を引き受けたな、と思ったけど、まあ先進的で良い役だよね。IT社長で、理知的で、すんなりと父親になる覚悟を決めてくれて、妊婦に協力的で、ゲイに間違われても快く、子育て最優先、現代のモテ男像というか…分娩室での一幕、出産にも立ち会って…いいひとすぎでは…? マークと友情が芽生えるあたり、ダニエルとはあり得なかった展開、か?? しかし結婚式での描写は出来すぎだったな…

レネ・ゼルウィガー、43歳にしては老けて見えてちょっとショック、でもまあ等身大なのかな、コリン・ファースも老けたなって、こんなもんなのかな。おばちゃんたちのラブコメどころかおばあちゃんたちのラブコメじゃあ、と思ったけど、ほどほどに、人生の苦味を知った、おばさんおじさんになってた、かな?

女友達の存在、良かったよ。エド・シーランの友情出演、スターに気付かなかったアラフォー二人組の描写、絶妙。

選曲の時代感、ジェス・グリン、カンナムスタイル、あの時代、あの瞬間のヒットソング、2015年あたりピンポイント!って感じ。ジェス・グリンまだまだ活躍してくれるって信じてるんだけど…

ついでに日記を綴るガジェットがiPadに。村議会議員に立候補した母はlgbt支援シングルマザー支援に転向して当選、ああ2015、6年、だわって感じ。

わりとシニカルに見てたんだけど、レズビアン、フェミニストのデモに対して、迷惑だ、権利を欲張りすぎだと笑い飛ばせたのはトランプ政権誕生以前だったからでは?という気がして…どうなんだろうな、イギリス事情…ブレグジットの国民投票が2016年だっけ…
日本人としてはもう、フェミニストめっちゃ必要だろ助けて、と感じるニュースに触れすぎているので、ああいう権利運動をまとめて腐すような台詞にはどうしても引っかかってしまう…妊娠出産がうまくいきゃOKじゃねえんだよっていう…あのタイミングであの台詞はぐんっと体温が下がったな…
ゲイだって子供を持てる時代なのにそれに比べて私は、という異性愛映画お決まりの描写のスパイスとしてゲイを登場させておきながら、わざわざデモに対してそういうこと言う? っていう失望感もあったかもしれない、うーんんん

まさかの妊娠、産婦人科医エマ・トンプソンの安心感。人生の伴侶を選ぶフェイズから父親を選ぶフェイズにジャンプしたわけだけど、ガツガツしすぎず…あくまでラブコメしてるあたり、すごいなって?『ウエイトレス おいしい人生の作り方』と似て非なる…
いま仕事を失うわけにはいかない、と奮い立つ場面があったわけだけど、シングルマザーになるならそれはそれで、という余裕を随所に感じられて…切実さが少なくて、まあ見やすさには繋がってたよね…

都合の良い夢のようにも思えるけど、40代の妊娠って意外とある…既婚女性で、もうないだろうと油断していたら妊娠してしまって出産より中絶を選ぶ人が多いという統計を見たような。子育てへの不安とか、もうちょっと深刻になって欲しかった気もするんだけど、まあ甘やかで見やすい、見やすいのは良いこと…

それにしてもブリジットの仕事のミスが相変わらず本気でヒヤッとする描写で。

ブリジットよりはるかに若い女上司役ケイト・オフリン、わりと好きな見た目、でもいまいちキャラ立ちしてなかったような…上昇志向ってほど上昇志向じゃないあたりはイマドキっぽかったけど。ファクトよりもセンセーショナルを求める下世話なワイドショー気質、前作のマスコミ観メディア観と大して変わらない気もしたし、そこまで有能さを感じられなくて、ダメダメなブリジットとの対比になりきらない感じ。世代交代を突きつけるわけでもなく…

ハードニュースとソフトニュース、ネット時代、マスコミは今後どうあるべきか、ああそういう時代だったな、この直後フェイクニュースの時代に突入して、ネットとマスコミの対立以上にジャーナリズムとは何かが争点の時代に…とか思ったけど、このあたりの転換期に関してはドラマ『ニュースルーム』で正解を見たと思ってるから…
あなたの新方針にはついていけないと言って辞めるブリジット、ちょっとなあ、一作目でも思ったけど、そこまで言ってやったぜ感がない…どうせならブリジットがフェイクニュース撒き散らす彼女に説教して辞めて、ブリジットも大人になったな…って、良くも悪くも感じたかったかも。あえてそうしなかった、あくまで親しみやすいブリジットを守ったように感じて、物足りず。
台詞のわりに、昔ながらのやり方の良さが伝わってこなくて、うーんんん、ブリジットの出産ニュースに大喜びしてテロップ出せ!と盛り上がるマスコミの内輪感にあんまりノレなかったから…ノレる盛り上がり方じゃなかったのが残念だったかな

クライマックスにかけて、仕事辞めてドン底からの、妊婦をお姫様抱っこ、分娩室でのやりとり、名場面の連打、という感じがして一作目を思わせてグッときたんだけども、出産でいきみながら無意識に手を握ったのがマークだった、ってちょっとあざとかったよな、突きつけられてなお去らなかったジャックの存在は新しかったけども

ちょっと引っかかりが多かったかな…時事ネタ抜きで恋愛と母親になることの両立メインで見たかった気持ち。

孤独を抱えたプレイボーイ・ダニエルに相変わらず対抗心を燃やす堅物マークと、そんな二人の悲哀を軽々と飛び越えていくいろんな意味で新しい男ジャックと母親ブリジットの四つ巴は見てみたい気がしたけど…さすがにないわな…

でもあのイギリスの田舎っぽさを感じる、野外にテント張った結婚式、素敵なラストだったとは思う。エリー・ゴールティングの主題歌が良い。祝祭感。良かったよ。

しかし、これからのラブコメ、ロマコメ、どうなるのかな…個人的にはゾーイ・カザンに頑張ってほしい、彼女にはおばちゃんになってもおばあちゃんになってもチョットだけ塩が効いたラブコメやっててほしい。でももう異性愛の恋愛話に興味ねえよって気もしてきたな、恋愛とは?って感じ。現代的な女性のイマっぽい恋愛事情を描く、とかじゃなくて、もっとこう、この女優と男優が恋愛してるとこ見たい〜!最高のシチュエーション考えて作ろう〜!みたいな、そういうのが見たいかも。
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