平成2年の男

ヤシの木に降る雪の平成2年の男のレビュー・感想・評価

ヤシの木に降る雪(2015年製作の映画)
4.9
・ここまで美しいセックスを俺は知らない。

・神から最も愛された人種は黒人なのではないか、とすら思う。ヒロインの肉体美に、くらくらするようなジェラシーを覚えた。

・本作に流れているサイキは、美しいものを見たい、美しいものを信じたい、という渇望だろう。

・国籍も文化も教養も、肌の色まで違う男女がソウルメイトとして結ばれる物語に、これほど心を打たれるのは、現在社会における愛というものを信じたいからであって、現実社会における愛を肯定することにはなり得ないところに本作の哀しさが結晶されている。

・スペインの植民地時代だったギニア共和国が舞台。この世界に住みたいと思った。二時間四十分はあまりに短い。ずっと、この御伽の国にたゆたっていたかった。

・ケチをつけるならば、まずヒロインの旦那の必要性である。彼は「愛さえあれば浮気は許容される」という部族内の文化的設定を描くために用意された噛ませ犬でしかなかった。本作のテーマである「永遠の愛」に、この旦那の存在の雑さが看過できない影を落としている。それから「二種類ある結婚様式」に係るやり取りにドラマ性を取り入れようとする制作陣の打算に興醒めした。演出されたドラマではなく、人模様を写実的に捉える中で浮かびあがるドラマを求めていた。以上2つの欠点から5.0から0.2を引いた4.8を評価としてつけた。それ以外は完璧である。無駄なシーンが一つもない。

・ハコボについて難癖つけている奴が多いが、本作の登場人物の中で、人間の醜さを最も体現しているのがハコボとは思わないだろうか。東南アジアを訪れた男女がみんなお猿さんになってしまうのは、短期語学留学中の若者の振る舞いを見れば明らかである。