sai

ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦のsaiのレビュー・感想・評価

4.0
まず、これは戦争映画ではなくて、完全に個人の戦いを描いたものだ。しかも壮絶で、圧倒的なまでに個人の破滅を描いている。

我々の世代は、戦争を知らない。だから、戦争の本質を語ることは決してできない。この映画を見て、実際の史実がどうとか、過去の映画の方が真に迫っていたとか、そんなことを語るのはお門違いなのだろう。

したがって、ストーリーについて批評することは何もない。犠牲の前に怒り、心を震わせ、そして自ら滅び行く道を選んだ人間を演じた役者、ならびに映像を作り上げた制作者たちに尊敬の念と拍手を送りたい。

ラスト30分間の、祈るような気持ちにさえさせる緊迫感。そして、息が詰まるようなラストシーンの美しさ。あれは壮絶さから来るものなのか、あるいは一種の救いを感じたからなのか?ああいった犠牲を前にすると、何か崇高のもののように感じてしまうのは、人間の本質ゆえなのか?いずれにしてもそこに正しさなどはなく、人間同士の殺し合いにしか過ぎないというのに。

やはり、こうした映画は、ある種のエンターテイメントとして成立していると、個人的には感じた。

余談だが、先日鑑賞したダンケルクと比べてキリアンマーフィーが頼もしく(なりすぎていて)、序盤少し笑ってしまった。
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