ラウぺ

ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦のラウぺのレビュー・感想・評価

3.8
もはや説明不要なハイドリヒ暗殺計画の顛末を描くこの作品、「暁の七人」に次ぐ3回目の映画化。
(4回目の映画化は日本では2019年公開の「ナチス第三の男」)

史実をもとにしているということもあり、端役に至るまで登場人物の殆どと、描かれるエピソードは「暁の七人」と驚くほど同じですが、映像や演出のキレはこちらの方が圧倒的に洗練されており、ハイドリヒが殆どというより襲撃場面以外ほぼまったく登場しないのが大きな違いとなっています。
この手の映画を観る人にはハイドリヒの人物像を説明する必要など殆どないでしょうし、冒頭に簡潔なチェコとハイドリヒについてのキャプションが入ることで最低限のフォローがなされています。
その代わり、ハイドリヒ暗殺が如何に大きなリスクを伴うかというところに脚本のウェイトが割かれており、映画にほぼ登場しないハイドリヒが如何に強大で恐ろしい存在であるかがかえって強調されるという非常によく考えられた構成となっています。

最近多くの英国系映画に登場するトビー・ジョーンズがチェコのレジスタンスのリーダー役で登場し、相変わらず印象的なところを見せています。
全体に無駄な要素を極力排し、襲撃の実行者であるガブチークとクヴィシュ二人に焦点を合わせることで、そこに居合わせているかのような臨場感と緊張感を作り出しています。
クライマックスの教会での場面にはじっくりと時間を割いて鬼神のように戦う空挺隊員の姿を克明に追っています。
「暁の七人」に対するささやかなオマージュと思われるシーンも挿入し、抑えたトーンの中でここだけはヒロイックなイメージを強調することで、滅びの美学ともいうべきこの物語を締め括っています。