ギルド

RAW〜少女のめざめ〜のギルドのレビュー・感想・評価

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)
4.3
【隠された本能の目醒め】
ベジタリアンの獣医志望の女学生が肉を食べて徐々にカニバリズムに目覚めるスリラージュブナイル映画。

「TITANE/チタン」公開記念に。
ベジタリアンの厳しい家系で育った少女が洗礼式と称して動物の血をぶっかけられたり、ウサギの腎臓を食べて肉の味に覚えて・・・なストーリー展開や絵面の時点でめちゃくちゃ強烈でガチで吐きそうになるシーンが2,3回ありました。
特に中盤のハサミで切られたアレを吸ったり舐めたり食べるシーンは本当に吐く手前まできました(笑) 
他にもトイレでアレを吐き出すシーン、冷蔵庫で生のアレを貪るシーン、ブルーマンみたいになるシーン、肉を目の前に本能全開で食らいつこうとするシーンはどれもめちゃくちゃ強烈でした。
絵面の「Liminal space」テイストに近い雰囲気とカニバリズムのグロテスクさも相まって、常に緊張感のある展開を見せるのが見どころだと思います!


けれども、めちゃくちゃグロい見た目とは裏腹にメッセージ性は純情なギャップが凄くてギャスパー・ノエの親戚かな?と感じました。
親元を離れて住んで様々な経験を通じて「性」や「内なる想い」が爆発するのを「カニバリズム」に投影するのはめちゃくちゃブッ飛んでいるけど、絵面のグロテスクな強度の根底にあるのは日常的なもののギャップに萌える(笑)
本作のタッチはギャスパー・ノエ「CLIMAX クライマックス」に似ていて、本筋と関係ない下品な会話は「レザボア・ドッグス」廊下の空間の撮り方は「シャイニング」、極端な顔元のクローズアップで強調するのは「アングスト/不安」「羊たちの沈黙」、スプラッターや原色発光の使い所は「サスペリア」、終盤のギョッとするある演出は「ゴッドファーザー」と過去の有名作のオマージュを思わせるシーンが散りばめられています。その辺は「CLIMAX」と似ているなーと思いました。
けれども、そういったオマージュを通じて主題はめちゃくちゃシンプルなんだけど主張を伝えるために分かりやすい例えで引用してると感じました。


そんな作家性を通じて
「家系の本能は遺伝する」
「ジュブナイルで束縛のない生活を通じて本能は目醒める」
「本能は学生時代にイキったり制御が効かないように取扱がすげー大変だから、ちゃんと自分で見つめて向き合い方を考えような!」
という黒歴史で学んだ親が子供もやらかさないように伝える温かさもあって、そういった意味で面白かったです!


P.S.
近日中に「TITANE/チタン」を見ようと思うけど、本作を通じて
・メッセージ性は純情でシンプル。でもそれを伝えるのにブレーキ効かないくらい猛スピードで突っ込んでくるよ!
・色んなオマージュ要素はあるけど、メッセージを伝えるのに分かりやすい例えで使ってるだけであんま気にしなくてOK

な印象を受けたし、グロテスクな耐性もついたので万全な状態でいけると思います!
ギルド

ギルド