このレビューはネタバレを含みます
愛に満ちた姉妹の物語だった。
ジュスティーヌがカニバリズムに目覚めるきっかけになったのが実の姉の指というのが痺れすぎる。そしてそのシーンが素晴らしい。指から滴ってくる血を自分の手のひらで受け止めて、衝動的に口をつけてしまう瞬間、血の味にハッとする瞬間にかかる音楽。この音楽、かなり前のめりに入ってくるけどタイミングが完璧オブ完璧でオルガンの音色も美しすぎる。
妹が自分の指を食べているのを見て涙を流すアレックスの表情も目に焼きつく。自分だけの個性であったはずのカニバリズムを、実は妹も持っていたことに対するあらゆる感情が溢れた形としての涙。「取られた」のかもしれない、けど、「心からこの子はわたしの妹」て感情のすべてだと思う。
愛しているから自分と相手の境界がわからなくなる。わからなくなると不安になるからいっそ制圧したくなる。自分のやり方に無理やり引きずり込もうとする。でも思うようにいかないから壊したくなる。でも本当に壊れてしまうと動揺してしまう。元に戻したくなる。愛しているから。
周りに野次馬ができる中で殴るわ噛むわ食いちぎるわの大喧嘩をやらかす姉妹の姿は本当に切ないし、愛しい。同じだけど同じじゃないことをお互いに確かめ合うために必要だったことなんだろう。どこにでもある姉妹ゲンカじゃん、ちょっと過激なだけで。
最後に、中指を妹に食われた左手をガラス越しに見せる姉と、返事の代わりに姉に食いちぎられた頰の傷跡をガラスにそっと押し付ける妹、愛しかない。互いの体の一部を引き受けて、自分の血肉としたふたり。いつまでもたったひとりの可愛い妹、いつまでもたったひとりの大事なお姉ちゃん。言葉がなくても雄弁な愛の告白だった。
めちゃくちゃに姉妹が愛しすぎてラストシーンは正直いらんと思ったがエンドロール中にオープニングとの繋がりに気づき、ハーというかんじ。家族の物語としてまとめたかったのかな。個人的には姉妹だけの物語でクローズさせてもよかったのではと思うけど。姉妹贔屓だから。
ヒィー!とはなるけど、ビビっていたほどゴア感とかグロ感はなかったと思う。でもあの大量の血があと少しでも黒めの色だったら凄まじく気持ち悪かっただろうなとも思う。色彩がよく計算されているということです。
主演のギャランス・マリリエ、素晴らしかった。あの目はほんと忘れられない。そして食べっぷりがいい。夜中に肉食べるの最高だよね!!しばらく肉が嫌になるのではと心配だったけど、今頭の中が馬刺しのことでいっぱいだ。焼肉に行きたい。