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RAW〜少女のめざめ〜のレクのレビュー・感想・評価

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)
4.1
赤色は興奮や愛情、危険や怒りなどのイメージがあります。
また、食欲を促進させる効果があります。
本作「RAW 少女のめざめ」のカラーとして鮮やかな色彩を楽しめるでしょう。

食欲と性欲は非常に関係性が強いもの。
満腹状態、つまり食欲が満たされた状態では性欲が薄れるらしいです。
ジュスティーヌも肉食に目覚めていくと同時に、性にも目覚めていきます。
16歳、思春期の彼女ですからそれは自然なこと。
しかし、その自然なことが異常だとさえ思えてしまうほど誇大表現で描かれています。
一方で、逆から見てみると、異常だと思える人食が自然なことである思春期の悩みと同等に、さも当たり前の悩みのように描かれているんです。
この自然さと異常さのバランスというか、食欲と性欲の関係性の描き方が素晴らしいんですよ!

ジュスティーヌという名前の由来はこの「ジュスティーヌあるいは美徳の不幸」。
ジュスティーヌは幼い頃、姉と修道院で育てられる。
修道院を出たジュスティーヌは、宗教的美徳に忠実であろうとするばかりに幾度も貶められたり辱められ、ついには罪をも被せられる。
しかし、彼女はそれに対して少しずつ悦びに目覚めていくというもの。
この作品は彼女が辛酸の数々を嘗め、"美徳を守ろうとする者には不幸が.悪徳に身を委ねる者には繁栄が訪れる"という皮肉的主題が描かれています。
宗教的美徳に逆らい、数々の辛酸を嘗め、罪を重ねることにより、自我が芽生える。
まさに本作のジュスティーヌの行動そのものなんですよね。

人食のめざめは少女の成長のメタファーとして描かれ、自分の嗜好を理解し、その上でどうやって生きていくかは彼女次第だと言うことを最後に残したように思えます。

「RAW」とは
「生の」、「皮のむけた」、「未熟な」、「下品な」
という意味があります。
タイトルそのままですが、原題は全く違ったものなんですよね。
原題『Grave』の意味としては
「墓」、「墓を掘る」、「重大な」、「尤もらしい」
などがありますが、この作品は
「(心や記憶などに)刻み込む」という意味が「尤もらしい」ですね。
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