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RAW〜少女のめざめ〜のmomoのレビュー・感想・評価

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)
5.0
劇場で公開ギリギリ滑り込みで観てきました。
日本で公開が決まる前からずっと観たかった作品なので、まず観られたことが嬉しくて感激。音楽も最高でした。サントラとかないのかな。

失神者続出の衝撃作品という、謳い文句?でしたが、こういった内容の作品に慣れているからか、その面ではそれほどでもないな…という感じでした

「RAW」 生、未加工、原料のままの、
作品名をしってすぐ意味を調べて、生、という意味だと知り今回観て、なるほどと深く納得。
確かにこれは「生」だと思った。
生々しく、そして瑞々しくもあるサスペンススリラーな青春映画でした。

繊細すぎるが故に爆発した性癖との付き合い方に対し苦しく悩ましく狂い出すジュスティーヌ。
敷かれたレールを順調に歩み出していたと思っていた矢先、新入生に対する生肉を食べろという通過儀礼、ベジタリアンの彼女にとってそれはある意味罪を犯すようなもので。学校に馴染みたかったからか、姉に庇ってもらえなかった苛立ちからかは定かではないけど、とにかく無理矢理口に入れる。
後で吐き出したは良いけど身体中に湿疹が出だす。必死にシーツの中で体を掻き毟る音が耳に残って、自分自身の体にも湿疹が出来ているんじゃないかと思うくらいに痒くなった。

ルームメイトでゲイのアドリアン。
彼との関係も、複雑で生々しい。
ゲイではあるもののジュスティーヌに気があるような素振りを見せ、結果的にジュスティーヌはアドリアンに処女を捧げた。アドリアンの肉体にじっとりと睨みつけるような目線を送り鼻血を出すジュスティーヌにエロティシズムを感じ、ここで、エロ(性欲?)と食は紙一重だと思った。
ジュスティーヌにとって身体は食事であり、それが性欲でもあるのかもしれない。
アドリアンとの性行為でジュスティーヌはアドリアンの首筋や耳辺りに噛み付こうと必死になって、最後には自身の腕を噛みちぎる勢いで噛み付いていて、白い肌に滴り落ちる真っ赤な血はまさに鮮血と呼ぶに相応しく、素敵だった。

姉、アレックスとの関係は傍から見れば良くないかもしれないけれどお互いに無くてはならない存在であった。それは最初は姉妹だから、という理由だったかも知れないけど、互いの腕を噛み合う程の揉みくちゃの喧嘩をしても結局は互いの癖に理解が出来るのは互いしか居なく、頼り合う事しか出来ないのを悟ったんだろうと思うし、実際そういうシーンが多かった。アレックスに私は変?と聞くジュスティーヌに変なのは私の方だよと返すアレックス。ジュスティーヌはまだ自身の癖に目覚めていない事をアレックスは知っていたのかな。いろんな映画をみて思うけど、日本の姉妹関係と海外の姉妹関係はやっぱり距離感が違うなと感じた。今回の姉妹は異常なほど距離が近い。姉に押されたと言えどもVゾーンの毛を処理させてしまう距離は凄い。そこで一悶着あり、ハサミで切断された姉の中指から滴る血を興味本位と喉の乾き、腹の空かしを埋める為に口に含む。その瞬間、ジュスティーヌの人生が明らかに変わって、その時の音楽も最高だった。

ただ単にベジタリアンの女の子がとんでもない性癖に目覚めるという話ではなくて、必死に普通でありたいと願い、自身の中にあるカニバリズムという望む普通ではない欲望への葛藤。テーマは突飛で有り得ない話だと言われても仕様が無いと思うけど、私たちとも変わらないのだと思う。社会との適切な距離感を図らなければならないものを背負って生きるという葛藤って、誰しもあるんじゃないかな。
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