三四郎

女性たち/女たちの三四郎のレビュー・感想・評価

女性たち/女たち(1939年製作の映画)
4.6
女の女による女のための超豪華MGMオールスター映画!!!
これぞ天にある星の数より勝るスターを掲げるMGMならではの大映画!大爆笑コメディ!
この映画の成功はロザリンドの喜劇演技だ。

しかしただのコメディではない。
映画のラストの方で気づいた。子沢山の女性は離婚の危機が訪れずどんどん子供が増えていくだけ…一方、ノーマやロザリンドは男と対等に付き合うのがベストだと思っているので離婚の危機が訪れ、離婚してしまう。
ラストシーンで、ノーマは再び元夫の愛を勝ち取るが、映画のメッセージ的には「幸せになりたければ、女はプライドを捨てよ!結婚したら子をたくさん産み、家庭を守れ!」と言っているように思える。これに気づいた瞬間、光り輝くスクリーンを前にしながら暗い映画館で、この映画は「女性たちへの教訓ものだ」と少しゾッとした。楽しいだけではない、現実を突きつけられた気がした。

女たちのおもしろさ、怖さ、厭らしさ、強さ、弱さ…すべて描かれている。娘が母に「お父様と私どっちを愛してる?」と聞くが、「愛の種類が違うわ」と母が応える。「大人になればわかるわ」と言いつつ、冒頭の娘との競馬シーンや、料理ができず娘からからかわれるとこなど、ノーマ自身もまだ子供なのだ。
この映画の中で、彼女は人生を知り、女を知り、男を知り、大人になっていくという成長物語だ。

クレジット演出がまたいい!出演女優たちを動物にたとえている笑!
ノーマ・シアラーは牝鹿、ジョーン・クロフォードは虎、ここで映画館の観客から笑いが起こる!ロザリンド・ラッセルは黒猫、ジョーン・フォンテインは羊。

セリフも笑えるものばかり!「張りのない布で作ったロッキー山脈みたい!」サマーレインを売る香水店の女店員クロフォードをロザリンドが女友達一人を引き連れて乗り込む一連のシーンが最高だ。
黒人のメイドを買収しご飯を作らせようとするクロフォード。「冷蔵庫には何がありますか?」「クモの巣と酒」と横から店員仲間!ノーマの夫からの電話に「残念だわ…手料理を作って待ってようと思ったのに」「ケーキにろうそくをつけて」などのくだりは爆笑!
商売女はケーキにはロウソクをつけるものだと思っているのか?ロマンチックな雰囲気になるから?いや男からそういうもてなしを受けてきたから、家庭的雰囲気を知らないのだ、階級の差が出ている。ケーキにロウソクだとバースデイケーキではないか!と爆笑してしまった!

クロフォードを指名するロザリンドと友人。「これどんな香りかしら」クロフォード、香水を顔前、鼻の前で直射!笑 「あなたに足りないのは色香よ」とクロフォード!そして喧嘩を吹っかけるロザリンドたちは閉店のチャイムに遭う。「貧乏人向けの音楽よ」言い足りないが帰る二人組、それに対しクロフォードが「それではさよならミセス・プラウアー(不審者)」ミセス・ファウラー役のロザリンドブチ切れる笑
その直後のシーンで怒った二人は余所見していたので大きな手押し車の中へ真っ逆さま笑!

ノーマの母の言葉が実に教訓的。
「男は浮気するもの。男には新鮮な刺激を求める時期が来るのよ。彼も歳をとったということ。自分に物足りなくなるのよ。女は賢いから料理や部屋の模様替えやドレスを買って紛らわすけど、男にはできないの。だから新しい女はドレスみたいなものよ(男にとって)恵まれた女が唯一味わう不幸が旦那の浮気よ、知らないふりをして耐えなさい。そのうち彼は戻って来るわ、あなたを最も愛してるんですもの、それに気づくときがくるわ」

それに対し「私たちはお互いに自由意志で結びついて愛し合ってるの!耐えるなんてことできないわ。私たちはイコール対等の関係よ!お母さんの時とは時代が違うわ!耐える女に価値なんてない!」

母親の言葉でもう一つ正しいのは「女友達は信じちゃダメ」

実に面白い、かつシビアな映画だ。途中のファッションシーンは鮮やかなカラー映画となっている!これには驚く!

映画を通して「電話」が重要だ。
男が一人も出てこないが電話の向こうにいる設定になっている。そして電話により女たちは浮き沈みしているのだ。噂を流すのも電話。特にノーマの受話器を持ってだんだん涙目になる演技は圧巻だ!彼女なかなかうまい!顔はタレ目というかつり上がっているというか真ん中への寄り目というか…私の好みではないが。
三四郎

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