HidekiIshimoto

浮雲のHidekiIshimotoのレビュー・感想・評価

浮雲(1955年製作の映画)
5.0
映画には洋画と邦画とがありまして、年季の入ってきた映画ファンならその両方にオールタイムなベスト作品というもんがあると思う。んで拙者の邦画のそれはこれ。もちろん昭和日本映画の黄金時代に、世界のナルセが昭和邦画界の頂上男優と天上女優をどんと据えて撮った大名作なので御意な方も多いと思うし、年季の入ったデコちゃんファンも俺みたいに昇天されてからようやく気づいた間抜けファンもサディスティックにいちびられる高峰秀子の絶頂はかな美に萌えつつも、森雅之のダンディダメ男ぶりに自己投影してというかダメさだけ投影されてマゾヒスティックに悶絶するというねじれた悦びに御意するしかないと思う。これ観るとなんかもうもっとちゃんとダメに生きなきゃいかんのじゃないか?器用に上手く生きるとか実存的にすごくダメなんじゃないのか?とか思わされる…なんてのは高度経済成長後生誕ボケの一種なんだろうけど、吹き流され吹きだまっていくこの昭和の二人の強力に地味な実存人生にはやっぱり憧れてしまう…のも長い平和ボケの一症状なのでござろうか?ともかくこの「浮雲」という不思議な刹那に満ちた言葉は、邦画史上最も詩情に満ちた題名として拙者の私情を揺さぶり続けているのでござります。