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浮雲の教授のレビュー・感想・評価

浮雲(1955年製作の映画)
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冒頭のシーンからとにかく「ピンと来る」というか。良い映画なのかは最初のシーンからわかる。
それから約2時間はその「良い映画」の答え合わせのような出来。

映画の中の物語を構成するシナリオと演出。編集であったり画面構成だったり、俳優の演技だったりが完璧だと言いたくなるほど良く出来ている。

特に主演2人の森雅之と高峰秀子のほぼ2人っきりのシーンが多く、また、これもファーストシーンで2人の境遇がおよそ推測出来たり、そういった予感に対して敏感な演出が施されている。

悪態をつきながら、皮肉を言いながら、自虐的に生き、卑怯とされながら鬱屈したニヒリズムを放出し続ける森雅之に、翻弄されて翻弄されてどんどん不幸になっていきながらも逆に強くもなっていく高峰秀子。

そして歪でありながら、腐れ縁のように続いていく2人は、これはこれでしっくり来ていたりするから、人生とか恋とかはほろ苦い。
でもそれって本当に現実の恋と同じだというリアリティで、男の女の本質であったりする。
男だってしっくり来ていてそこに真っ直ぐ大切にできる男なんてこの世では「ロッキー」ぐらいなもので大抵の場合、色男の中年なんてこんなものである。
一方で、惚れた弱みで虐げられた女というものもまた、このような感情に振り回されている。

その容赦のない。メインのストーリーよりも背景や、微妙なセリフに忍ばせて構成されている題材から、構成から見事過ぎるほど完璧な映画だった。
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