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永遠と一日のromioのレビュー・感想・評価

永遠と一日(1998年製作の映画)
4.7
至高の時間であった。

何回でも見ていたい、そう思える映画が、稀にあるが。これも、そんな映画の一つ。
自分の解釈によってどんどんと深まっていく。そんな作品ってほんといい。

この映画を始めて見たのは、たしか2年か3年前。
冒頭何分かの、その後を感じさせるあまりのやばさに見ることをやめた。
思い出させるのはタルコフスキーの鏡。ノスタルジアとも近いところはあるか。

主人公は自身に迫る死を予感している、初老の詩人。
私は明日旅に出ると言う。
地平線と空の境界が分からない、映像が美しい。
自分の人生を見つめる映画であると同時に、国の境、人との距離、今日と明日、そんなそれぞれの境界も今作のテーマである。
そして、終わりにはこの老人アレキサンドロの人生を追体験したかのような感動がある。

詩人とは、言葉を流暢に美しく操るそんな職業の人を想像するかもしれないが、この作品を見て持った印象は、自分がいかに言葉を知らないかをよく知っている人。そしてもっと知りたいと望むそんな人だ。
主人公が、詩人とあって、よくしゃべる。特に序盤、独白シーンがあるのだが、それがめっちゃタルい。おいおい、黙れよ。と何度も思った。
しかし、その言葉こそが詩人にとって過去、現在、未来を繋ぐものであり。自身のアイデンティティなのである。

もともと著名な作家であった主人公。言葉を求めれば求めるほどに、いままでのものは無意味に感じられ、詩に没頭し、手元には未完の大作が残るのみ。
有名な写真家に、自身の写真家としての活動よりも1枚の絵を描く方が有意義だと言った人がいる。
彼の写真は素晴らしいものがあるが、その絵はひどくレベルの低いものに感じられた。彼の晩年はそんな絵を描き続ける日々だったという。
表現を追求していくということが、そういうものなのだなということがよく伝わってきた。

非常におすすめである。
しかし、見るタイミングも選ぶので、ゆっくりと時間のある時におすすめしたい。
この後、ちょっといい映画とかを見ると、そのあまりの軽さに3歩歩めず状態に陥るので注意。
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