マヒロ

1944 独ソ・エストニア戦線のマヒロのレビュー・感想・評価

1944 独ソ・エストニア戦線(2015年製作の映画)
3.5
第二次大戦中、ソ連に占領されたエストニアにて、それを迎え撃つドイツ軍との間で戦闘が巻き起こる。両国に挟まれた形となるエストニア人の兵士たちは、ソ連側・ドイツ側に分かれて自国民同士で戦う事になる……というお話。

自分と同じ国の人々と殺し合わなくてはならないというかなり過酷な歴史について、ドイツ側の兵士・カールとソ連側の兵士・ユーリの二人の若者の目線から描いており、戦争映画は数あれどなかなかハードな題材。
エストニアと言えば『みかんの丘』でジョージアとアブハジア自治共和国の戦闘に巻き込まれていたエストニア移民の主人公たちを思い出すが、自国でも二つの国の戦闘に巻き込まれた過去があるとは、なかなか苦労が絶えない国の様子(ちなみに今作の監督であるエルモ・ニュカネンは『みかんの丘』で主人公のお隣さんのみかん農家を演じていた人らしい)。

半ば巻き込まれるような形で自国民同士で殺し合いさせられる悲劇に尽きるという感じの映画で、全体的なトーンとしては割と明るめではあるが、気づかずに撃った相手が同じエストニア人だった……という場面の絶望感や、そうでなくても先ほどまで話していた仲間があっさり死んでいくところなど、戦闘による死がかなり容赦なく描かれており、その妥協のない描写が良かった。
主人公のキャラ付けが薄めで周りの兵士たちに埋没しかけているのがちょっと気になったが、概ね面白い良作だった。

(2021.139)
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