Inagaquilala

月面に立った最後の男のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

月面に立った最後の男(2014年製作の映画)
3.9
いまごろ観ることとなったが、このドキュメンタリーは2014年にリリースされている。アポロ17号で月に行き、月面を歩いたユージン・サーナン宇宙飛行士の半生を描いたものだが、彼は2017年1月、82歳で死去している。つまり、少なくとも死の数年前に、まるで間近の死を予想していたかのようにつくられている。月面を歩いた宇宙飛行士は、全部で12人いるが、1972年12月、このユージン・サーナン飛行士が、月面を去って以来、あの地に立った人類はいない。いわば、タイトル通り「月面に立った最後の男」なのだ。

思えば、それから半世紀近く経っているのだ。それだけに実際に月面に立った、このサーナンの存在と発言は重い。冒頭、テキサスのカーボーイの格好をしたサーナンが、ロデオを見つめる場面がある。サーナンの意識は、この荒馬乗りから、いつしか宇宙飛行士時代に体験した、無重力空間での訓練に移っていく。そのあと、彼は、カーボーイの格好で、野営地から空中に輝く月を見上げる。あそこに行ったのだという、しみじみとした述懐。なかなかドラマティックにつくられたドキュメンタリーなのだ。彼が、アポロ計画が終了して、打ち捨てられた宇宙基地を歩く映像もよい。いったい、人類は月に何を仮託していたのか、ドキュメンタリーは問いかけてくる。月面に立った人類はあと何人生き残っているのだろうか。そういう意味でも貴重な作品であることに変わりはない。
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