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Death Note/デスノートのcorsbyのネタバレレビュー・内容・結末

Death Note/デスノート(2017年製作の映画)
2.1

このレビューはネタバレを含みます

駄目だこいつ… 早くなんとかしないと… と思う箇所も…
しかし新しいストーリーは斬新!


あらすじ
「このノートに名前を書かれた人間は死ぬ」そんなデスノートを偶然手に入れたライト・ターナー。彼はクラスメイトのミアの勧めもあり、そのノートを悪人処刑に使おうと決意する。しかし警察官であるライトの父と、名探偵のLがタッグを組んでライトの逮捕に乗り出す。
自身が追われていることに気がついたライトは、Lの執事であるワタリを利用してLを殺そうとする。その過程でワタリが死に、Lは激昂。ライトとミアを追い詰める。
ライトは咄嗟の機転で逮捕も死をも乗り切る。しかしミアは死亡。一旦はライトの手から離れたデスノートだったが、再びライトの元に戻った。


感想
個人的にデスノート(1部)の大ファンです。人生で間違いなく一番好きな漫画。突っ込みどころは多いですが、話の展開は斬新で面白い点もあり、原作リスペクトも感じられる。

残念だった点
・ライトの最初の殺し
死神がけしかけるのではなく、自分で試してしまったことが重要。それによってある意味自分の罪から逃げられなくなる。殺してしまったのだから、ここでやめればこの殺しを否定することになる恐怖。これが映画では「怖い死神に言われたから」が動機になってしまっている。
→しかしこれも後に述べる『ライトの白と黒』のための原作改変だと考えれば許容範囲内…?
かくにも、全体的にリュークが前面に出過ぎている。あくまで基本的な立場としてはノートの行末を見届ける傍観者である方が好み。

・ライトがノートの存在を自ら他人に明かす
これも原作の月なら有り得ない。物語の展開上仕方ないのか…。このミアなら突き止めそうでもあるが

・ライト父の顔出し
命を懸ける事と命をやすやす奪われる可能性がある事をするのは正反対だってLも言ってた。
ここで父を殺さなかったからライトがキラというのも、もう少しトリックが欲しかった。

・ダイナー
原作のカフェなんだろうけど、周りから丸聞こえでは?

・声を荒げるL
なんか違うんだよな… 突然顔出すのはよかった。

・ワタリの本名がワタリ
違うでしょ!!

・ワイミーズハウス
自由教育のカケラもない。

・カーチェイス
ワタリを失って取り乱すLは良かった(後述)が、あそこまでだと本来のL像がかなり崩れてしまう。

・ノート燃やしたらいいとか変なルール
イレイサーリスペクトなのか?
「一度、名前・死因・死の状況が書き込まれれば、万が一、その設定した死の時間の前にノートや書き込んだその部分が燃える等しても書き込まれた内容に影響はない」のでは… あと死神がライト以外見えない設定いる?


原作とは違うな〜と思った点
・ミア
ミサの残虐性だけとって月に一目惚れしなかった、ような感じ? 違いすぎて良くも悪くも…

・ノートが結構分厚くて防水性だった
・やたらとグロテスク(そこまでする必要あるかな?感もあり)


好きだった点
・ライトターナーの白と黒
原作の月はさっさと人殺しに対する倫理観を失うが、ライトは事あるごとに自分の行いに対して心が揺れ動く。
月が躊躇いなくやってのけたFBI殺し(=彼の初めての“まったく罪のない人に対する殺し”)をミアがやろうとすることに対して憤怒する。原作とは状況がかなり異なるとは言え、父を殺すことは選択肢にもないような様子。追い詰められた時には明らかに手掛かりになることを言う(自分にとって不利になるにも関わらず)。性善説を信じているような側面もあり、ミアが(自分の説得があれば)ノートを手放すはずだと確信している。
これは、ライトの父のキャラクターが大きく関係しているように思う。原作の総一郎はキラを決して許さない、「白か黒か」のような、真っ直ぐな人間だった。その逆を行くように、月はキラとしての道をひたすらに進んでいく。しかし映画での父は「グレー」の考え方を口にしている。「世の中には白黒つけられないことがあり、マシな方を選ぶことが大切」のようなことをライトにも言っている。こうして本作のライトはまさしく「グレー」の位置で葛藤し続けているように見える。
個人的にはこれ、かなり面白くないか!? と思う。原作では全く異なる正義のぶつかり合いとして描かれていたLと月だが、これは二人が手を組んでミアを捕らえるなんてこともあるんじゃないか!? と鑑賞しながら考えていた。そんなことはなかったのだが、続編があるとすればこの二人の原作とは違った関係性に期待したい。
そう言った意味でも、Lのキャラクター掘り下げがあまりにも少なく残念でならない。変なメガネしてブチギレただけで終わってしまった。

・Lの失意と激昂
ワタリを失ったLは原作で(ほとんど)描かれなかったので、彼の取り乱す姿を見て、普段冷静な彼でもこんな風になってしまうほど大切な人だったのかと思わされた。残念なのは本作のLが大していつも冷静な名探偵ではなかったこと。
しかし彼の大胆不敵さはよく表現されていた。

・ミアの死去シーン
美しいの一言。アニメでの死(直接的には描かれていないが)とはまた違った美しさがある。

・ライト、馬鹿じゃない
確かに原作ほどの天才ではないが、最後の種明かしにはゾッとするほどの頭の良さがある。警察に追い詰められながらあそこまで人を操ることを思いつくことの凄さ。「そういえばライト、馬鹿じゃなかった」と言うか、「そういえばライト、月だった」のようなウワッと息が詰まる恐ろしさがある。
前述のように今作のライトはいたってグレーなのだが、そんな彼が人を信じた上で講じた保身のための策だからこその怖さがある。本気になればここまでできるんだ、という、ある意味原作のレイペンバー殺しに通ずるところもあるように感じた。
夜神月はこうでなくては、を最後の最後に見せてくれた。

・ライトターナー役ナットさんの目の演技
ノートを手にしたいわゆる「黒」のライトの目が素晴らしい。恐ろしい目をしている。良い。

・吹き替え
島崎信長と三木眞一郎、どちらも良い。凄い! アニメをこの二人でも見たいくらい良かった。



最後にエンドロールの話
ネトフリオリジナルは他に見たことがないのだが、エンドロールにNG集があった。そこにライトとLのダイナーでのシーンもあるのだが、これを見て胸が熱くなって熱くなってたまらなかった。原作ではまず有り得ない、藤原竜也と松山ケンイチがメイキングや宣伝で親しげにしているのとも違う、しかし誰もが見たかった光景なのではないだろうか…。映画ではまだ分からないが、決して手を組むことのないライトとL。二人が夜闇にひっそりと浮かぶ、ネオンきらめくダイナーで笑い合う光景。とても胸が詰まった。もちろん原作の最高のライバルとしての二人が何より好きなのだが、どうしても、“どこかに存在してほしかった”と思ってしまう世界がそこにあった…


中間点2.5から改悪を引いて独創性を足しました。エンドロールがすごかったので300002.1点くらいありますが、2.1点




追記
今回残虐描写がリアルになったことによって、原作ではあまり意識しなかった加害者の存在をとても意識させられた。
最初の首チョッキンの原因となる梯子を載せていた車の運転手は、ライトがノートに同級生の名前を書かなければ罪に問われることも無かったのだから、正に巻き添えにあったことになる。
その後原作を見返して恐田を轢き殺した人に対しても思ったのだが、この辺にはとても世の不条理を感じる。
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