マクガフィン

曇天に笑うのマクガフィンのレビュー・感想・評価

曇天に笑う(2018年製作の映画)
2.7
300年に1度復活しては災いをもたらすとされる大蛇をめぐる物語。アニメ未見。原作未読。

冒頭の時代劇の背景をドローン空撮から逃げる浪人を追う手持ちカメラへの切れ目が分からない、ワンカット(?)のシーンに感心させられる。時代劇にありふれたセットだが、喧喧とした大衆の和太鼓や踊りは今後の展開を暗示しているかのように感じて、ワクワクする。

しかし、冒頭のシーンはプロットに関係ないのが惜しく、話が進むに従って、その規模が次第に縮小されていき、セットや撮影場所の奥行や高さが狭い所ばかりでSF要素を取り入れているのに世界観が狭く感じる。また、作品全般のバランスが悪くて、邦画映画ならではの残念なCGが臨場感を削ぐことになり、もっとコミカルな描写も挟んだ方が良かったのでは。

プロットは御都合主義で、終盤の大蛇封じ込めの拝むシーンは謎だらけ。次男(中山優馬)と三男の大蛇に対する知識は、作品の前知識が全くない私と同じ知識量のはずなのに、手際よく手伝うことに違和感極まる。それ以前に次男と三男の赤ん坊のころの命を助けた長男が、死んだ親代わりに2人を育てるために政府の仕事を辞めることになる年齢設定の幅が謎なことなどで、中盤で集中力が切れることに。

プロットや演出の過不足を役者の演技力で補うことが近年の邦画アルアルだが、長男(福士蒼汰)の「ちょっと今から・・・」の性格と同じ演技や次男の葛藤はセリフでしか伝わってこないことは如何なものか。役者全般の演技力が足りないので、方言や時代用語が少なかったことは良かったが。

あれこれ考えなく、「亜人」で良かったバトルアクションを楽しもうと思いきや、長男の武器が扇子で、超接近戦しかできないのに、襲い掛かる者たちが長男の距離にどんどん入っていくことは如何なものか。インファイターなら自分からが動かないと。
また、序盤の次男と終盤の長男は殺されてもおかしくないシーンが何度もあり、敵の殺傷本能の欠如で迫力不足に。木刀の稽古と命を賭けた戦いがフラットに感じて、「亜人」と同じ監督だとは思えない。

残念ながら及第点に届かない娯楽作だが、メイン女優が全くいなく、イケメン男優も多くて男だらけなので、贔屓役者や女性が見たら違った角度で楽しめると思うのだが、それらに当てはまらないで94分が長く感じた。