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攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3DのBGのレビュー・感想・評価

3.7
神山版のシリーズ3作目。S.A.C 2nd GIGの2年後、個別の11人事件後に素子が去った2年後の公安9課を描いた完全続編。TVシリーズ必見!

敵側に論理的問題はあるものの一定の正義があるのがいいよね。またそれが、ネットワークによる相互意識から発生した特定多数の総意であることが事件の社会性を際立たせるのだ。これによって生まれる葛藤。やっぱ攻殻は面白い!

高齢化した社会における文字通り人的資産の有効活用がテーマ。健全な社会の発達は、必ずしも個の幸せを尊重しない訳で。すると正義VS正義の構造が生まれる。これはシビルウォーであり、個における葛藤そのものだ。

トグサの中にある人道的正義に対して、真っ向から反論するソリッドソサエティの構造的正義。そこに、情緒的正義で行動するバトーと組織的正義で判断するアラマキの思惑が絡み合う。これに対して、達観した現実的正義を求望する素子はどんな決断を下すのか。

非常に複雑な背景に難解なストーリーが絡み合い、もはや困惑するしかないのだが、これを作中で融合させているのだから、なかなかの手腕だ。硬派なハードボイルドとして成立していると思う。

菅野ようこ神による音楽はもちろんのこと、攻殻の魅力の1つでもある未来描写が、良い!未来でありながら、一部で残る生活感が残る現代的な風景。電脳内のサイバー描写と肉体的グロ描写。こうした対比の1つ1つが、ネットワークシステムとスタンドアローンの構造的対比を象徴しながら、歪な相互補完に導いていく。もう少し生々しいグロさがあった方がいいとは思うが。

で、つまるところ、作品では社会を描きながらも、個の在り方に最終的に言及していく。自分も社会の一部であること、そして絶対的な個であることの矛盾。これに直面しながらも、精神を正常に保つには、幻想的な繋がりに依存するしかないのかも知れない。家族、愛、信頼、友情、思い出、思想、信仰、連帯 etc.

ネットは広大だ。つまり、世界は広大なのだ。その中には、1つくらい信じ続けられる幻想があるかもしれない。絶望なんて必要ない。さあ、ゴーストの囁きに耳を傾けて。
ハードボイルドであり、リアリズムに根差した硬派な作品なのだが、視点は常に優しい。これこそが、攻殻機動隊の本質的な魅力なのかもしれないね。
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