矢吹

攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3Dの矢吹のレビュー・感想・評価

3.9
3Dじゃなくて、普通にネットフリックスで。
自分は、SACがやっぱり好きかなあ。

ゴーストインザシェル、イノセンスはかなり暗い映像にディープな川井氏の音楽、編集の中の象徴的なショットの数々によるノスタルジックな間やエモーションの遊びしろがたくさんあって、あれはあれでいいんだが、
一方、SACは比較的画面は明るく、巨匠、菅野よう子氏が音楽を担当しているので、全音がシャレシャレだし、かなりライトに上品かつスマートで、テンポもめちゃ良い。
話のテーマの重さ自体はそんなかわんないのに、面白いぐらいに毛色が全く違うよな。
しかし菅野さんはまじでなんでも作れるな。すごすぎ。
作品自体もとっつきやすいし、素直にカッコいい。

我らがサイトーの銃撃が最高だったな。
そこからのバトーの飛び降りも絵的にめちゃくちゃかっこいいし、一連の少佐登場までの緊張感もやばいし、
て、おい、タチコマァ!
と、かなり忙しい。

ただ今作はトグサ隊長が素晴らしすぎた。
マテバと義体化
作品通してこだわり抜いてきたもの、これがまたトグサのかっこよさだった、を捨ててしまったことにかなしみを覚えながらも、それでもという組織への責任感にまたかっこよさを感じつつ。
この前提があった上での、後半の、
生身とマテバの使い方が素晴らしい。
トグサの意思で娘を救済する。
あそこ、彼の良さが全部詰まった部分だなあと思う。

上映時間が108分間ってのもかなり良いですね。
キャラクターの良さ、ドラマ、事件の展開も相変わらず面白いし、アクション見せて、サイバーパンクやりながら、話や演出でゴーストインザシェルやイノセンスも踏襲するし、そこに少子高齢化という現代社会の問題もベースにしながらね、なんだこれ、出来すぎてないか。
原作見てないからどこからの引用だとか攻殻機動隊の世界について語るには実際、全く踏み込める余地がないけど、ざっとアニメ見ただけでも普通に感動。

攻殻機動隊はどの話もそうだけど、
勧善懲悪ではないのがいいよなあ。
人間社会のシステムの軋轢からくる事件だから、どこかはしっかりノワールなのが好きだわ。
今作も例によって、
電脳倫理、電脳ハックとか記憶の改竄とか、虐待、孤独死、子供の教育、洗脳エリート、高齢者の経済、財産管理、人的資本の活用方法、今の日本とこれからの日本でも確実に考えることになるであろう問題が詰まってる。
そして、共同体的、集団的無意識の一人歩きかあ。
これは現代でも、どこにでもある気もするよな。
まあ、ごたごた言うても、
あの世界でも同様に、アイデンがどうたら垂れないで、当たり前のように日常を生きる人たちがたくさんいて、きっと自分もその1人になれるはずだから。実際どうでもよく生きられるんだろうな。まじで自分の非力さを組織やシステムのせいにしながらね。ざっくりいうとそう言う態度に警鐘してる話でもあるのに関わらず。

「成長した彼らが、個のポテンシャルを上げて、我々が出せない答えを見つけ出してくれることを祈るばかりだ」
metoo。

イヤホンを耳につけながらパソコンとかスマホに挿すとき、ダイブする気分になっちゃうよね。
矢吹

矢吹