天狗

ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring Yearsの天狗のレビュー・感想・評価

5.0
なぜか途中から目が潤み始めて終始そんな状態で鑑賞を終えました。もちろん彼らのアルバムは全て所有していますし自分の音楽人生にとっては極めて大きな存在に違いないのですが、そういうプライベートな感覚ではなく、もう少し俯瞰的な感覚に陥ったとも言いましょうか、不思議な感覚でした。本作で描かれているように彼らが登場した1960年代はある意味で世界的に激動の時代だったわけです。東西冷戦、人種差別、ベトナム戦争、ケネディ暗殺などそれは個人レベルではなく国家レベルでのイデオロギーの衝突の時代。そこに突然現われた彼らは国家など通り越した、実はそれがとても個人レベルでの社会的ムーブメントの可能性を世界中に知らしめたわけです。今みたくインターネットもSNSもない時代です。彼らに心酔し絶叫するのには、肌の色も政治的信条も関係なかったわけです。今では当たり前のそんなことを世界中の若者たちに初めて気が付かせたことこそ、彼らが身を粉にして精神的限界まで追い詰められながらも世界中をライブで回ったことの功績ではなかったか。だから監督のロン・ハワードはライブをしていた時までのビートルズを扱うことにしたのではないだろうか。精神の限界はドラッグへの逃避と依存を当然の帰結とし、その後の作品性に大きな影響を与えたはずであり、グループの解散にも少なからず繋がったはずでしょう。その意味において、彼らを消費し食い尽くしたのはあの時代、あの時代の若者たち、そして何よりもその後の時代の変化を享受している現代の我々一人ひとりなのではないか、そんな思いで終始涙目になりつつ観ざるを得なかったというわけでした。
皆さんも是非。