Ginny

ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK‐The Touring YearsのGinnyのレビュー・感想・評価

5.0
すごくすごく良かったです。
こんな風に感動すると思わなかったし、ビートルズへの印象が変わりました。

生きている人間を対象物として「物」扱いしないでほしい。
生身の人間なのだから、尊重してほしい。
勝手に騒ぎ立てて勝手に理想化して苦しめないでほしい。
そう思いました。

ビートルズの4人は至極まともなのに、
マスコミやファンが異常、狂っているとこの映画を見て思いました。
インタビュー映像、パフォーマンス中のファンの熱狂、ビートルズを追いかけて走りかける様子。
当初は、ライブチケットの完売の報を受けて泣き崩れるさまは可愛いものと思えてました。でもだんだんエスカレートしていくファン(と便宜上呼ぶけれどあれはファンとは定義できない異常者)には引くばかりでした。

今はSNSがあって、一億総マスコミと言われるくらい皆が発信できる。
それを参考にする人も増えていて、インフルエンサーだとか企業ものっかっている。
でも根拠もないし出典も不明のものが多い。予測、どこかで見聞きった話を書き連ねたまとめだとかうさんくさいブログが蔓延っている。
それを見て知った気になってないですか?
それだけを見て、生身の人間を物扱いして中傷してないですか?

スターダムにのりあげるという1964年。
彼らのインタビューはエスプリがきいていて誰もが惹かれる魅力的な人柄が伝わりました。返しがうまい、映画で言っている通り4人全員がそう。
でも1966年くらいのインタビューで出てきたものでは、意地の悪いやつが人間として低レベルな投げかけをしてくる。お前マスコミじゃねーから!単なるクズだから!という気分でした。

周りの人間が身勝手な質問やイメージをぶつけてきて、
ビートルズの4人は何もそんなこと言ってないしやってないのになぜか弁明を求められて、追い掛け回されて、疲弊するのも当然だと思った。
ビートルズに熱狂したのが私たちで、私たちがビートルズをダメにした、と思った(ダメにしたというのは比喩で、私たちというのもたとえ)。

4人がお互いのことを大好きで支えあって信頼して曲を作り上げてきたのが伝わった。
ビートルズが解散したのは不仲と一言で片づけられることなんかじゃなくて、ビートルズがもう自分たちの手に負えない範囲で膨れ上がって自分たちを異常なスピードと勢いで追い詰めるから、終わりにするしかなかったんじゃないかなと思いました。この映画を見て。
ビートルズのことをしっかり勉強して理解していない人間が何言うんだという感じかもしれないけど。

そうさせてしまったのは、
「私たち」というマスコミの言葉を鵜呑みにして無責任に叩き追い掛け回し苦しめた有象無象の一般大衆だと思う。
この映画はビートルズを知れる映画というだけでなく、そういった面で自省を気づかせてくれる映画でもあるのではないかと思った。わかる人にしかわかんないだろうけど。

そういう話ではなくても、ただビートルズの裏話も貴重な映像も本人たちのインタビューも、ノリにのれる音楽もありとても楽しめる映画ですけどね。

3回ウルウル泣きそうになった。
1)公民権運動の時代のビートルズの発言と行動
2)HELPの歌詞を改めて見て
3)ウーピーゴールドバークの思い出話

ビートルズは偉大だと思うし、圧倒されたけれど、
彼らの幸せを奪ってしまったのではないかと切ない気持ちになりました。

この映画が4人の色恋沙汰を取り上げず、
粛々と4人にフォーカスしていたのが良かったです。

とっても良かったです。
Ginny

Ginny