TAK44マグナム

スウィートホームのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

スウィートホーム(1989年製作の映画)
3.2
古舘伊知郎がはしゃぎまくる!


故・伊丹十三といえば、謎の死をとげた悲劇の映画監督兼俳優さんですね。
代表作は大ヒットした「マルサの女」になるでしょうか。
個人的にはラーメン屋を繁盛させる西部劇「タンポポ」が好きですが、実はホラー映画もプロデュースしておりました。
その作品こそ「スウィートホーム」。
映画としてはそこまでのヒットには至らず、どちらかというとメディアミックスで発売された同名タイトルのファミコンゲームの方が有名かも。
YouTubeなどで検索すると、ゲームプレイ動画とか沢山でてきますし。
ファミコンゲームの歴史の中でも特に怖いと評判だったらしいんですね。
らしい、というのは当時も現在も未プレイなので内容をよく知らないのです。
でも、「バイオハザード」に影響を与えていると言われているぐらいなので、良く出来たゲームだったのでしょう。

そんなわけで、たまたま色々と観ていたところ本作を発見、ついつい最後まで観ちゃった次第。
監督は、なんと黒沢清!
いまではサイコなホラーの分野で大御所ですな。
主演は、伊丹作品と言えば当然の宮本信子。ドキュメンタリー番組の演出担当役。
共演に、山城新伍、黒田福美、古舘伊知郎、レベッカのヴォーカルNOKKO、そして伊丹十三が老けメイクでガソリンスタンドのお爺さん役として出演、突如歌い出したり、大変な目にあったりとバリバリの存在感を発揮しております。


お話は簡単。
死んだ高名な画家が遺した洋館に、ドキュメンタリー番組を撮るためにやってきた製作スタッフたちが、ある呪われた者を呼び覚ましてしまったが故に惨殺されたりしちゃってタイヘーン!
悪霊の正体、そして目的は何か?
恐怖の一夜が、古舘伊知郎をハジけさせます!


何と言ってもですね、本作最大のトピックは、メイクアップの神様と呼ばれたディック・スミスを招へいした事でしょう。
「アマデウス」でオスカーも受賞した最高の人材の手による、当時の邦画としては驚異的なSFXがウリだったんですなぁ!
そのテクニックはゴア描写にもいかんなく発揮され、上半身と下半身がグチャグチャに切断されたり、人間が高熱で溶けてしまうといった残酷性の高い場面が、80年代の観客たちに多大なショックを与えたのも頷けますね。
まぁそうは言っても、ディック・スミス御大も初期は「恐怖のワニ人間」とかも手掛けていたらしいですけれど(苦笑)
人に歴史あり!

個人的には、古舘伊知郎や黒田福美が殺される中盤までがピークで、あとは緩やかに下降線をたどっていったという感じです。
「ああ、そういう展開ね」と、少し残念だったのは、最終的に救済の話になってしまったからで、甘めのオカルトが好みの方なら多少の古臭さが気にならなければ気に入るのではないでしょうか。
ちょっとだけ、「MAMA」を思い出したかな。

中盤以降の若干のテンポの悪さ、NOKKOのスクリームクイーンぶりが大根、黒田福美のキャラが浅い、GSのオヤジがどうしてオカルトなパワーを持っているのか分からない等々、気にしても仕方がないけれど気になってしまう箇所もありますが、それらを全部合わせても敵わないのが古舘伊知郎の衣装のアバンギャルドさ(苦笑)
古舘伊知郎だからね。
いくら若い頃といっても、古舘伊知郎だからさ(汗)
劇中だと、とっぽいカメラマン役だったんですが、正直、役も衣装も似合ってはいませんでした・・・プププ
でも、指だしの黒いドライビンググローブって買ったなぁ・・・とか若気の至りを思い出させてもらいましたよ、伊知郎に。

そんなキャスティングの妙も含めて楽しんだもの勝ちな、これぞ80年代に狂い咲いた徒花。
でも哀しいことに、本作は現在、権利関係が宙に浮いてて劇場でかかることもDVD化も難しいらしいのです。
伊丹十三と黒沢清の間にすったもんだ(裁判沙汰)がありまして、伊丹十三が鬼籍に入ってだいぶ久しい現在でも問題がクリアされていないんですって。
Jホラー以前の、折角の邦画ホラーなのに勿体ない。
古舘伊知郎と黒田福美を狙う「漆黒の影」なんて、ビジュアル的にも蠢いている感じが素晴らしいのに・・・
早く権利問題が解決されて、ソフト化や名画座での上映があれば良いのになと思いますね。


某動画サイトにて