足立監督が若松プロに加入し「堕胎」(1966)「避妊革命」(1967)とピンク映画2本の監督を経て手掛けた自主製作映画。新宿文化地下の“アンダーグラウンド蝎座”のオープニングを飾った作品。助監督に沖島勲。モノカラー。
海岸の道路に故障した車。男(花上晃)は浜辺に自分に似た男(竹邑類)を見つけ絞め殺す。そして、車を走らせる男を助手席から誘惑する女。激突し重傷を負った男の前に僧侶が現れる。自転車、ボール、凧、祭りの神輿など、男の思い出の品を次々と出して見せる謎の僧侶。逃げ続ける男の前に、再び自分に似た男が現れ絞め殺す。しかし、殺されたのは自分自身だった。。。
60年代東京の無機質な風景の中で繰り広げられる不条理劇の絵面は、同年の「ウルトラセブン」(1967)実相寺昭雄監督回に類似。巨大化する女や空中に物体が現れる特撮は「ウルトラマン」(1966)のメフィラス星人の回を連想。題名の「銀河系」もウルトラシリーズを想起させる。しかし本作にはヒーローも宇宙人も登場せず、全体的には「怪奇大作戦」(1968)を観ているかのよう。ちなみに主演の花上晃は同作第10話「死を呼ぶ電波」でマッド・サイエンティストを演じていた。
当時の円谷プロがアヴァンギャルドだったとも言えるし、逆に本作が子供向けテレビ番組のようだとも言えるが、実存をテーマにしたシナリオはいかにも当時のアングラ的である。足立監督がまだ政治に傾きすぎていない時期のアート作品であり、映画作家としての質と力量を見極めるのに最適な一本と思われる。
蠍座での公開中は連日大盛況で、これを機に足立監督は、演劇の唐十郎、ジャズの冨樫雅彦と共に新宿の三大天才と呼ばれるようになる。
※“自分と似た男”を演じた竹邑類は後に舞台の振り付けや演出で活躍する。三島由紀夫に可愛がられ短編小説「月」(1962)のモデルとなっている。