Kevin

エタニティ 永遠の花たちへのKevinのレビュー・感想・評価

3.7
19世紀末フランス、ヴァランティーヌ(オドレイ・トトゥ)という女性はジュールという男性との婚約を一度は破棄したが、その後も諦めない彼の心に次第に惹かれ、遂に夫婦の中となる。
月日が経つにつれ、2人の愛情は更に深まり沢山の子宝にも恵まれていく。
しかし戦争、病が家族の幸せを阻むこととなるが、それでも悲しみを乗り越えたヴァランティーヌら。
そんな彼女の息子の一人であるアンリ(ジェレミー・レニエ)とその幼馴染みマチルド(メラニー・ロラン)が結婚することとなる。
更に息子夫婦に加え、マチルドの従姉妹ガブリエラ(ベレニス・ベジョ)とその夫もヴァランティーヌのもとを訪れるようになり、大家族のような賑やかで幸せな日々が続くのだが...。

“人生とは死者を見送ることだ”という劇中の台詞の通り、本作では誕生と死去を繰り返す。
漸く出会えた命もあれば、願わぬ別れもある。

淡々と描かれるものの、その映像には常に愛情が満ち満ちていた。
また、映像の色合い自体も柔らかく、より温かい印象を受けた。
その上、物語の舞台も格別に美しく、一コマ一コマ切り取っても絵になるくらいだ。
そして終始流れる数々のクラシック音楽に心を優しく包み込まれる。

そこに自分が世界一美しいと思っているメラニー・ロラン、更にはオドレイ・トトゥ,ベラニス・ベジョら、現代のフランス映画界を牽引する3人が相まって芸術作品を眺めているかのよう。
本当に溜め息が出るほど美しい作品だった。

話は変わるが、BUMPの〝ひとりごと〟という曲の中に“渡せないのに貰えたんだ”という一節がある。
自分は本作を鑑賞中、この一節がふと浮かんだ。
こちらは優しさについて歌っているのだが、本作のような〝愛〟に対しても同様のことが言えるだろう。

形がある訳でもないし、渡そうとして渡せるモノでもない。
でも気付けば相手からしっかりと貰っていて、こちらからもいつの間にかあげていて。
親であれば子に、子は親から授かった愛を我が子に...。
こうして愛を繋いでいき、いつしか自分も大きな愛の中にいることを知る。

愛ほど不確かで確かなモノはないのではないだろうか。
文字的には矛盾しているが、この言葉しか見当たらない。

誰かが死んでもその誰かが誰かに与えた愛は無くなることはない。
心に植えられた愛は永遠の花となり、未来永劫受け継がれていく。
今の自分が居ることは、何世代もの愛があったという事実。
その愛が存在した最も分かり易い証が僕らなのだろう。

自分が経験した愛から成る体験が記憶に刷り込まれていく様に、本作もまた、自然と記憶に刷り込まれていく。

改めて家族って素敵だなぁと思えた。
絶賛生涯独身コースまっしぐらだけど、家族持ちたいなぁと。笑
それと自分の家族は少し変わっているけど、今までの家族の歴史を知りたくなった。

比較的地味で台詞も多くなく単調ではあるが、この美しく壮大な愛の物語は一見の価値があるはずです。
Kevin

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