emily

過激派オペラのemilyのレビュー・感想・評価

過激派オペラ(2016年製作の映画)
3.3
 演出家のナオコは公私混同しながら自身の「過激派オペラ」の演劇に全身全霊を注いでいる。主役に抜擢したハルコは私生活でもカップルとなるが、浮気を疑われてハルコの嫉妬は炸裂し、演劇の過激なシーンに女性達の感情が交差し・・

 劇団「毛皮族」主宰の江本純子による初長編監督作。過激すぎる女性達の演劇、その真剣さと、そこに至るまでの練習に公私混同するナオコ。ナオコにとっては自身の城であり、夢であり、絶頂の場所である。演劇と現実が重なり、やがてあふれ出す女同士のドロドロした感情が見事に演劇を超え、真剣になればなるほど下品でユーモラスで、コメディに転がっていく皮肉。

 女性同士のシーンに美しさは感じさせない。過剰な音と、過剰に反応する声により生々しい生が通った嫌悪感を覚えるシーンが続く。青春のキラキラや瑞々しさを見事に良い意味で下品にすり替え、現実感のある描写と真逆の描写がバランスを保ち、さらにはそれを見事にぶっ壊し、ハチャメチャに見せながら、しっかり普遍的な愛の物語へ誘う。

 演劇は体当たりでいかに自分をさらけ出して裸になれるか。それは実生活でも同じだ。だれもが自分を演じる女優で、誰かと心通わすためには、裸になるしかないのだ。
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