カント

ニコラス・ウィントンと669人の子どもたちのカントのレビュー・感想・評価

3.7
僕…そんな大した事をしたつもり無いよ。ただ君達が殺されそうなので少し手助けしただけだし。…ナチスから669人の子供達を救ったニコラス氏の軌跡を追うドキュメント。

▼有名所ではシンドラー。チウネ・スギハラ。無名な所では樋口季一郎など…ナチスからユダヤ人を救った人は居るけれどニコラス氏は変わり種。そんな気は無かったのに、いつの間にか一生懸命に子供達を救出してました…的な。
そんな彼だから救出された側の子供達も、その事実を知らず…その全貌を知ったのは50年の歳月を過ぎた頃でした。

本作はニコラスに救出された子供の1人、カナダのTVジャーナリスト、ジョー・シュレシンジャー氏が主人公。原題「ニッキーの家族」
▼1938年。ドイツに救世主たる英雄爆誕!その名はヒトラー。国内の不満を他民族への憎悪へ転換。ユダヤ人、ジプシー、スラブ人。憎悪を利用した戦争でドイツ快進撃!
スロバキアのユダヤ人の少女マルカは友達に両頬をぶたれ、ジョンは大ケガしても「ユダヤ人だから」と治療を受ける事も出来ない。
▼チェコスロバキアへのドイツの要求はスデーデン地方の割譲。
同年9月ミュンヘン会議。英仏は屈辱的な取引にサインする。英仏はナチスと戦争する気なし。
「ミュンヘン」は「臆病な譲歩」の代名詞となる。
軽井沢→避暑地。網走→囚人、のような物か。
▼1938年12月、当時29歳のニコラス。旅行好き。元々人道支援など無関心。友人とスイスへスキーに行く予定だったが、友人からの1本の電話が運命を変えた。
「プラハで難民を救助しててスキーに行けない」と。
ニコラスは友人を手伝いにプラハへ向かう。そこで目にしたドイツの領土拡大地図。ドイツは全ヨーロッパを支配しようとしていた。
▼人種迫害を受けるユダヤ人の母達がニコラスを尋ねる。皆、困っていた。何のルートも組織も無いニコラスの取った救助作戦とは如何なる物だったのか。

▼1988年。50年の歳月を経て1冊のノートをニコラスの妻が見つける。そこには600人以上の写真や手紙。偽造したハーケンクロイツ(鉤十字)の押印。
現在、老齢となった子供達は命を救われた恩人の名も知らず、なぜ自分が里子(養子)になったかの経緯も知らされず50年間生きてきた。

▼50年前のニコラスの(気まぐれな)偉業と、その志を継ぐ人々。
齢(ヨワイ)99歳のニコラスの謙遜の姿勢と再会の涙。そしてニコラスの意思を継ぐ人々の姿が本当に素晴らしい。
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