そそ

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのそそのレビュー・感想・評価

4.3
棒読みで全然感情が籠っていないセリフ、不自然なズームインとズームアウト、シンメトリーな引きのショット、そして不協和音と、不自然なまでな突き放し具合が尋常でない。深刻な展開に対してもカメラが人間に一切感情移入をさせようとせず、必死な様子を一歩引いて滑稽なものへと変換する。登場人物が倒れても、目から血を出しても、利己的な醜い姿を露呈し出しても、悲劇にもコメディにも持っていかない冷酷さ。ただただあるがままの姿が記録されるのみ。ある特定のルールを強いられる状況においての人間性のそのままを描写しているのが監督作の特色の1つだと思うが、今作はそれが特に顕著なように感じた。とにかく無機質で、全く体温が感じられない。妥協が全く無く、素晴らしいです。
非現実的、を現実的にする力(というかまあこの人になら出来るだろうなと強引に納得させる力)を持つバリー・コーガンも素晴らしい。怒声を上げる訳でも暴力で支配する訳でもなく、言動に生じるノイズが違和感を少しずつ形成していき、やがて気づいた時には最早手遅れになっているその圧倒的上位存在感。喜怒哀楽の存在しないその超自然的な佇まいには純粋無垢さすらあり、月並みな言葉だが、やはり唯一無二の存在感だ。
心臓で始まり心臓で終わる、主人公の外科医という職業が強烈なメタファーとなって綺麗に纏まるスマートさも素晴らしい。不条理スリラーとしても、家族崩壊スリラーとしても文句無しに洗練された大傑作です
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