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聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのmitoのレビュー・感想・評価

4.2
自分が映画の感想を書くときに執拗に引用する「籠の中の少女」の監督、ヨルゴス・ランティモス監督作品。

まさかのビガイルドと同じコリン・ファレルとニコール・キッドマンのタッグ。

自分の子供でもない少年に、頻繁に面会する心臓外科医スティーブン。
彼は同じく医者の妻、二人の子供と幸せな暮らしをしていた。
ある時、下の子供が原因不明の歩行困難状態に陥る。やがて原因が判明するが、その時スティーブンは壮絶な選択を迫られる事となる。

ハネケ監督同様、ランティモス監督もブレない(笑)
「大切な人を誰か一人犠牲にしないとならない時、人はどうするのか」非日常だが、考えるだけでゾッとする内容を主軸に置く何とも恐ろしい作品。
過ちには代償を。人の命を奪ったら自らも命を…マーティンは悪びれもせず、スティーブンにそう言い放ち、事実その通りになってしまう。

歩行困難になる原因がスティーブンが面会している少年マーティンだった、という部分はまあ、本質では無いので良いとして、
その事実を突き付けられた時の本人の、そして家族の行動は終盤になるにつれ観ていて心苦しいものになる。

1番辛いのは、末っ子であり、一番初めの発症者であるボブの行動。
恐らくまだ小学生くらいであるボブがスティーブンの決断で自分が殺される可能性があると知り、命乞いの媚を売るところ。
「サボってた水やりを明日からちゃんとやります。」
「お母さんと同じ眼科医になるのが夢だったけど、最近お父さんと同じ心臓外科医になりたいと思ってるんだ。」

そのシーンの直後、父スティーブンはそんな気遣いをされて隠れて号泣してしまう。どんだけキツい場面を見せれば気が済むのか…。
妻であるアナも同じく媚び媚びのアピールをするが、やはり子供が命乞いをするという様が余りにも鮮烈で未だに忘れられない。

あと序盤の姉が歌う「Burn」
予告編でも感じたが、あのアカペラの感じが映画にマッチしていて、これまた強い印象が残る。

ランティモス監督の作品は本当、こういう記憶に焼き付くシーンが多い。
今回もしてやられた気分。
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