柏エシディシ

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアの柏エシディシのレビュー・感想・評価

3.0
開幕早々、祭壇に捧げられた供物を思い起こさせる脈動する臓器が大写しになり、示唆的なタイトルと併せて、この作品が何らかの犠牲や代償の物語なんだと予想させられる。
そこから一瞬たりとも安堵する瞬間を与えてくれない、最高に厭な映画(褒意)

なんで人は厭な気持ちになる映画を好んで観たがるんでしょうかね。面白い。
まぁ、仮に道端に大きな穴が空いてたら、怖くても覗き込んでしまうのと同じなんでしょうな。好奇心というかサガというか。
この世界の仕組みを「物語」という枠組みで明らかにしてくれるものが映画であるならば、時に解釈不可能な世界の仕組みの本性も暴いてみせるのも映画。そんな気分を時に味わいたくて、また劇場に足を運んでしまう。

前作「ロブスター」でもユニークな舞台立てと丁寧でそれでいてヒネくれた演出でアイロニックな現代の寓話を紡いでみせたヨルゴスランティモス監督。
本作もアウリスのイピゲネイアというキーワードはあれども、それも直接的な引用ではない模様。観客一人ひとりで受け取り方や解釈を自由にすれば良いのではないでしょうか。

観た人誰しもが絶賛するであろう、底知れない暗黒を体現するバリーコーガンの存在感。
端正、故にそれが脆くも崩れる様子をこれ以上ない説得力で演じる女優ニコールキッドマン。
ロブスターに続き、この不可解な世界に取り込まれ、足掻きながらも堕ちていく観客の分身となる、コリンファレル。
そして、危うい美少女ぶりが眩しいラフィーキャシディー。あの唄の不穏な響きは一度聴いたら忘れられませんね。ひゅーまんれーすひゅーまんれーす♪
とっても意地悪なアリシアシルヴァーストーンの起用も見事。往年のファンには中々のショックですが。
柏エシディシ

柏エシディシ